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お許しくださいお母さま!

 えぇ、えぇ、捕まりましたわ。


「あの、どうかなさったのですか?」


「お気になさらないでくださいまし、ウィリアム王子」


 この子供段階でイケメンオーラを振りまくイケメン王子に捕まってしまいました。根拠はほぼほぼ役に立たない私の記憶ですがパッケージの目立つところにいた方にそっくりですもの!


「……下手な返答すると即バッド、いえロボが出るような作品ですし即デッドエンドですわね」


 えぇえぇ、人間の命など吹けば飛ぶ紙よりも軽い。ロボットモノではよくあることですわ。


「……あ、あの本当にどうかしましたか?」


「いえいえ、ただ色々と思ったのですわ、命というものは……何であれ儚いモノだと」


 えぇ、この王子にいらんことをしたら殺されますもの、どうせそういう展開だと知っていますので。


「……そうですね、多くの人々が今もこの世界で亡くなっています」


 ん? あの、そういうガチシリアスな感じですの?


「かつての大戦から時は十年以上経ちましたが、あの大戦でも何十万人もの人々が―」


 ……こいつ本当に五歳か?


 ……いけないいけない、私は悪役とは言え令嬢、お嬢様らしくしなければ。


「そのことに貴女も気が付いていたのですね!」


 やっべ、話聞いてませんでしたわ。


 王族の話を聞いてませんでしたとか、これは……デッドエンドもありますわね!!


 である以上は、何の話をしていたかなんて聞くことはできませんわ。


 つまりなんかそれっぽい感じの返答をする必要があるのですが、やってみるしかないですわね!


「ふっ、甘いのですわねウィリアム王子」


「あ、甘いですか」


「えぇ、甘いのですわ」


「貴方はいずれは国のトップに立つお方。表向きはその甘さを出しながらも冷酷な選択をしなければならないのですわっ!」


 えぇえぇ、トップに立つものは大なり小なり非情な選択をするのはロボモノのお約束ですわ。スペースコロニー地球に落とそうとしたり、大量殺戮兵器を地球にぶっ放したり、核兵器で地球を核の炎で焼こうとしたり。……これが乙女ゲーであるとともに、ロボットモノでもある以上この位のことはできる方でないと困りますわね!


「……そう、ですね、えぇそんなのかもしれません」


 ……あ、納得してるってことは問題はなかったようですわね。


「時には非情な選択も―」


「ウィリアム王子、リーリエのことなど気にしないでくださいませ」


 あら、お母さま。


「ですが、彼女の言葉も真理です」




 ……あれ、これもしかしなくてもろくでもない事を刷り込んだ案件では?


 未来のラスボスを生み出してしまったのでは?


「まぁ、私が死なないなら別に問題はありま―」


 いえ、問題がありましたわ。えぇえぇ、なんか心の友がさらっとネタバレとしてかましてきた内容の一つ、攻略対象の王子が悪堕ちして人類を粛正するとか何とかでやべーことになるバッドエンドの存在を。


 ……そ、そんなことになっては私の未来は……というかこの世界そのものの破滅ですわ!?


 やはり、やはりそんな時に彼を止められるようにするためにも聖機士の訓練は必須ですわ!


「リーリエ」


 ……は、これはお父様に土下座してでも訓練の時間を―。


「リーリエ!!」


「お母さま!?」


 お、鬼ですわ! 悪魔ですわ!


「いいえ、貴女のお母さまですよ」


 なっ、心の中を読まれたですわ!?


「あ、あのお母さま?」


「……ちょっとこちらに来なさい、お話がありますので」


 こ、これはここでデッドエンドですの!?


「お、お許しくださいお母さまー!!」


 




「時には無慈悲に、冷酷に……ですか、先生方とは違う人なんですね」


 僕には彼女のことが分からない、まるでどこか遠くの国からやってきたような、視点がまるで違う人。


「それなのに、あのような面白おかしな母親への対応ですか」


 お許しくださいお母さまー、でしたっけ。そのまま……見たことがない体勢でしたけど、アレはいったいどのような……まぁ、お許しくださいー、ですし謝罪の意味を示す動作なのでしょうけど……初めて見ました。


 アレがリヴァーレ家の独特なものなのでしょうか。


 奇人のローマン、あまりにも突飛な装備で戦場を駆けまわり、最前線で指揮を執っていた英雄。


 彼の常軌を逸した振る舞いは先代の王が恐怖したほどであったとか。


 朝起きたら出撃、ひと暴れしたら帰ってきて食事。


 食後の運動がてら出撃、ひと暴れしたら帰ってきて昼食。


 また食後の運動で出撃、お昼寝してまた出撃。


 夕食を食べて腹ごなしに出撃、風呂に入って軽く踊って寝る。


 それを繰り返して誰よりも敵を倒した男。それが奇人のローマン。


 そんな彼と結婚したのは敵国から裏切ってきた女。トライゾン・リヴァーレ。


 ……そんな二人の娘がリーリエ・リヴァーレ。


「これは、僕にも、いや王ですら抑えられない嵐になるかもしれませんね」




 はっ! どこかでなにか私にとって不味い展開になる予感がしましたわ!?


 ……やはり、やはり最強パイロットへと進化計画は必須?


 いえ、むしろ私が優秀なパイロットを集めて新勢力を作り出すルートを創造するのがベスト?


 ……あー、でもそのパターンは何か悪役感が出るから負けそうですわねぇ。


「お嬢様、ここ最近やたら考え込むようになりましたね」


「もしかしてウィリアム王子に惚れた?」


「……ないとは言い切れませんねぇ」


 それこそ、世界征服をたくらむ悪の科学者とか出てきてくださりませんかねぇ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 空の魔王みたいな親父……
[一言] リーリエお嬢様へ。 人のお話はちゃんと聴きましょう。 (まあ聞き逃さないとお話が転がらないわけですがw)
[良い点] ああ、今これは面白くなってきています! リーリエ様が悪役としてキャストされたのも不思議ではありません。彼女は戦場で恐ろしいモンスターと裏切り者から生まれましたが、どちらも現在はよく扱われて…
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