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今できることをしますわ!

 正論、圧倒的正論でもって私は聖機士の訓練を受けることができませんでした。


 だいたい何年ぐらい待てば訓練ができるようになるのですか


「……いや、まぁ腕の長さとかの話だから個人差あるからなぁ……」


 そんな話は良いのです、平均どのくらいかだけでいいのですわっ!


「あー、それなら大体三年ぐらいか」


 三年……長いようで案外短い、でもやっぱり少し長い時間ですわね。


「……急にどうしたリーリエ、お前今まであまり興味はなかっただろう」


「目覚めたのですわ! 数日前に我が家に届けられた聖機士を見て!」


 いや、まぁ実際その通りですのでこうとしか言えませんわね。アレで前世の記憶が目覚めてこうなったという感じですし。


「そうかそうかっ! アレはなオーダーメイドで作らせた私のための聖機士でな! アレの良さが分かるとはリーリエは将来有望だなぁ」


 ふふふふっ、えぇえぇ分かりますとも! あの聖機士にはバカみたいなロマン武器の塊ですもの。


「いやぁ、グラガ社のドリルアーム、ボームズ社のパイルバンカー、他にも強力なものを買い漁ってだな」


 なるほど、お父様の趣味の産物……。ところでちゃんと使えますの?


「その辺りは安心しろ、お父さんはな【奇人のローマン】という異名があるほどには優秀な聖機士の使い手なのだよ」


 ……奇人って、馬鹿にされてるのではないでしょうか……いや、まぁ? お父様がバカみたいに強い方だとは使用人たちもおっしゃっているし。尊敬なのでしょう、多分。


「とはいえせっかく興味を持ったのに何もしないというのもなぁ」


 そうです、私も今できることで訓練がしたいですわ。


「よし、ならばこの聖機士についてのマニュアルを読むんだ」


 訂正しますわ、堅苦しい文章なんぞ読みたくないですわ。




 楽しくないお勉強が始まってから大体一年、どうやら前世とは違って頭の……というか脳味噌の出来が違うようで教科書の内容を丸暗記してしまいました。


「おぉ、リーリエは天才だぁぁぁぁ!!」


 お父様がやたらハイテンションでお褒めいただいてくださっています。


「貴方に似たのですよ」


 お母様も涙を流して喜んでいただいています。実に嬉しいモノですが、しかしそこまで喜ばれるものなのでしょうか。


「まさか十歳以上で読むような本をここまでしっかりと理解するだなんて」


 ……訂正しますわ、結構自分でも大概なことしたことは理解できましたもの。


 えーっと、リーリエは確か……学園でも屈指のエースの文武両道お嬢様……あー、文字通りの天才だったのでしょう。肉体は彼女のモノである以上は私の肉体も天才のもの。


 大事なのはその天才スペックを私が活かし切れるかですわね。




 さて、できることがなくなってしまった現在、将来的なことを考える時間もできましたわね。


「……さて、【聖機士学園 彼方の空へ】の設定を思い出すとしましょう」


 とはいえ自分が実際にプレイしたことはない以上、思い出すのはプレイしなくてもわかる話と、心の友が教えてくれた話のみ。


「……パッケージに写ってたイケメンは四人だった、となると注意しなければならない相手ですわね」


 どうせ放っておいても絡むことにはなるでしょうけど、私の立ち位置が悪役令嬢である以上、グッドエンドルート世界だとどうせ私ろくなことにはならないでしょうし。


「……全員殺すか」


 いけないいけない、そんなことをしてバレたら私の待っているエンディングは、犯罪者として処罰されるかもしくは―。


「世界を敵に回し勝利する人類の天敵ルート」


 いや、そのパターンでも勝てるぐらいの実力が手に入るならばそれは理想ですけれど。そんな血生臭いルートなどごめんこうむります。


「実は主人公がどういう方なのかも知らないのですわよねぇ」


 パッケージにいなかったから。


 ついでに言えば名前も知らない、だって名前変えられるらしいから。


「最重要危険人物が何者なのか分からないとは、困ったモノですわね」


 せいぜい分かっているのは私と同じ年齢の女性ということで……。


「学園にやってくる女子生徒で私と同い年になる方を皆殺しにするしか?」


 冗談でもそれをしたら天敵ルート以外生きる道はありませんわね。


「けーっきょく何にも分かりませんわね」


 さて、もうこうなったら考えてもなにも意味がない。


 お散歩でもしましょう。




 リヴァーレ家はそれはもう高名な家。なにせ公爵家ですの。


 正直なところ私はそれがどれだけ偉い家なのか分かっていないのですけれど。まぁ、つまりは貴族ですわ。


 それ故に住んでいる家も、豪邸というかもう宮殿みたいな家。確か過去の戦争でお父様が異様な活躍を遂げたことで今の爵位になったのだーとか、定期的に酔っぱらったお父様が言ってましたわね。


 聖機士の格納庫も家にあったりと、正直下手な観光地なんかよりもぶらぶら歩いているだけで楽しい場所。


 お庭も庭師たちが美しい光景を作ってくださって。……私の語彙力がないのが悲しくなる位に素晴らしいわ。薔薇の花が綺麗に咲いて。


「お嬢様、失礼ながらそれは薔薇ではなくラナンキュラスです」


 ……ラナンキュラスが美しく咲いて。


「そちらはチューリップですね、まだ満開ではないですが」


 ……う・つ・く・し・い! お花が咲いていますわ!!


「花の勉強であればリヴァーレ家に仕える庭師一同でお話しますが」


 ……暇なときにお願いしますわ。


 ところでですけれど。


「あちらの男の子は誰ですの?」


 なんというか、パーフェクト王子様って感じの王子様顔な金髪碧眼の方ですが。


「あぁ、あちらは第一王子のウィリアム王子ですよ」


 ……あ、思い出したパッケージの一番目立つところにいた奴に顔そっくりですもの。


 あ、来たっ! こっちに気が付いて来たっ! イケメンスマイルでこっちに来ましたわ!?

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[良い点] コイツ、コジマを履修してるだと……!
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