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彗星はバァーって動くものですわ

 さてと、料理の準備は済んだことですし、頑張った彼女の方に手を回しましょうか。


「リーリエさん、パーティーの方楽しんでます?」


 本日の主役にして、(恐らく)この世界の主人公。平民でありながら聖機士の搭乗者となった彼女。


 どこか難しい顔をして、私が作った料理を見つめている辺り、自分なりに立場というモノでも考えているのでしょう。


 本来原作において、私は彼女の敵に回る存在(だと思われる)、悪役令嬢とはそういうものでしょう。


 きっと、原作通りにはいかないでしょう。初っ端からライバルキャラが味方になってしまった場合の物語、なんて速攻破綻するに決まっていますもの。


 だから、原作知識が変に偏っているという私の弱点を、原作崩壊させることで弱点としないようにしてしまいましょう。


 下手に知識がある方が、間違った判断を引き起こしてしまう可能性もありますし。


「は、はいっ!」


 彼女は元気にそう返事はしているものの、どこか……思いつめたような表情をしているのを見れば、どう考えても楽しんでいるようには見えません。


 ハッキリと言えば、パーティーの最中に底意地の悪い奴に見られれば、嫌みの一つでも飛び出すのは避けられないし、そうなってしまえば空気も悪くなるに決まっています。


 ですから―。


「ちょっとついて来なさい」


 この場所に彼女を居させるわけにはいきません。




「……アイビーエさん、パーティーに何かご不満が?」


 庭園から離れて、というかそもそも館の中、それも二回の人目のつかない部屋に連れて行く。


 問うのはパーティーへの不満。彼女は貴族ではないがゆえに、貴族のパーティーを楽しめないのではないか、そもそも私が何か不手際を起こしているのではないか。


 正直なところ、場の空気が悪くなるということ以上に、私の行動に問題があってのではないか、という疑問が恐怖に移ろうとしているところではあった。


 公爵の娘、つまりは次代の公爵と私はなる。


 貴族の中でも最も位の高い者、それは必然それ相応の責任を持つこととなる。


 そう考えれば、自分が主催したパーティーが、よほどのトラブルが発生したわけでもないのに、大失敗したとなれば貴族として相応しくないと言えるだろう。


 無論そのミスだけで貴族としての立場を失う、などということはないでしょうが。それでも周りからの評価は下げられる。そうなれば、困った時に助けてもらえる可能性も減るのです。


 原作のストーリーなど欠片も知らない私ですが、大抵の物語の悪役など碌な末路はありません。


 たまに許してもらえたり、改心して味方側になんてのもありますが、それでも大抵それなりの禊はさせられるものです。家族が殺されたり、今までの悪行の結果を見せつけられたりと。


 その末路に行かない努力だけはすべきでしょう?


 だからこそ、彼女の視点で不満があったというのならば、私はできるすべてで改善すべきです。


 主人公が常に正しいというつもりはありません。それはもう怒られたり、悲劇を巻き起こしたりするなんてよくある話です。


 けれども、大抵のお話は主人公が最後にバシッと決めるモノ。


 主人公の味方として振る舞えば、まぁ最悪でもいい感じには死ねるでしょうから。


「えっと、パーティーには不満は―」


 どこか言い辛そうに、彼女はそう口を開きました。ですが私にはわかります。


 どう考えても不満がありありですもの。


「正直に言いなさい、それはまぁ貴女は庶民の一般人。ですが、それでも一人の人間です、聖機士に選ばれた人間です。私は誰にも言いませんし、手助けもしますわよ」


 それは、それこそ何もしていない貴族よりも尊ばれるものであり、敬われてしかるべきでしょう。


「……その、二つありまして」


 やはりあるではありませんか。


「……学園の方ではない方たちが、私を見る視線と言いますか」


 そりゃまぁ、珍しいでしょう。きっと上野動物園のパンダもそう言う気分だったのでしょう。いや、まぁパンダの感情何て知りませんが。


 庶民でありながら、聖機士に選ばれ、貴族が操る聖機士を打倒した。それはまぁすこぶる珍しいモノです。


 だって、物語で主人公をやれるような才能ですもの。


 ただの貴族の娘にすぎない私と比べても主人公力が桁違い、これを見るなというのも無理でしょう。


「それはまぁ、慣れるしかないですわ。貴女はそう言う星に生まれてきた、悲しいですがそれが現実です。ですが―」


 目線を変えることはできるはずです。


「今はただ珍しいからそうみられている、だけれども別の肩書を手に入れれば、貴女に向けられる視線は別のモノになります」

「どうすれば、変わりますか?」


 無論彼女の問いは正当なものだ。私だって同じ立場ならば間違いなく聞くでしょう。


 その中で私が知るものは―。


「戦いなさい。戦って、戦って、戦い抜いて、私は貴族よりも絶対的に強いという力を示しなさい」


 力、それだけです。純粋なまでの暴力は、時には人の思惑を容易く乗り越える。


「……鍛えてくれますか?」

「あら、すでに鍛えているではありませんか」


 彼女の問いに対しては私そう答えましょう。望む限りは鍛えます。強い相手が一人でも多い方が、楽しいですもの。


「アイビー、貴女は聖機士と共に星に、それも彗星におなりなさい。誰もが願いを載せるような、彗星に」

「彗星に……」

「いいですか、暗いことなど考えてはいけません。彗星はバァーって動くものですわ。だから、止まらず前を向いて進むのです」




「あぁ、それでもう一つは?」

「お、お料理の味が……その―」


 ……あぁ、そういう―。


「あまり美味しくなかったと言いますか」

「料理の勉強をすることにしますわ」

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[良い点] 真面目さとドラマのミックスが大好きです。 そして最後に冗談を言います。 あははは! 皆さん、一生懸命頑張ってください!
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