これが若さって奴ですわね
「肘打ちッ!! 裏拳ッ!! 正拳ッ!!」
皆さん、リーリエですわ。
本日は――。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
推定主人公のアイビーさんが乗る、聖機士をボッコボコにしているところから始まりますわ。
えぇ、ド素人なのでしょう……多分、本来の乙女ゲームユーザーのプレイングスキルはこんなものなのでしょう。
……いや、まぁ普通に考えて乙女ゲームをしようとしたら、急にガッチガチの操作性が独特な、ロボットアクションゲーム始まったらこうもなりますわ。
ちなみに本日私の愛機【ホーアオブバビロン】の初陣という形にもなりますわ。
……いや、寄りにもよって、大淫婦バビロンではありませんか!? 黙示録の獣の上にいたとかいう、最終的に神の裁きからの獣に食われて死ぬ奴ではありませんか!!
ある意味悪役令嬢たる私には、かなりお似合いの機体名ですわね。
……よくない、ものすごく破滅というか、死亡フラグ臭がビンビンッ! でよろしくありませんわっ。
ちなみに何が面倒かというと、国によって聖機士の管理自体が行われております。
まぁ、強大な力が、好き勝手に振るわれると大変ですものね。
えぇ、この辺りはよく分かっているのです、ですが――。
「機体名の変更にはそれ相応の手続きが必要で、ひたすらに面倒くさいなんてどういうことですのよ」
愚痴らずにはいられませんわ、ぱっと見でデザイン気に入ったからこれにしましたけど……。
えぇ、デザイン良し! 武装バランスも良し! お高い機体だから、家の名的にも見劣りしない!
ネーミング、ネーミングさえもう少しいいモノだったら。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
と、考え事をしている間に、ぶっ飛ばしたアイビーさんの【メサイア】が向かってくるではありませんか。
救世主、ドストレートに主役って感じですわねぇ。
とは言え――。
「ド素人が無理に接近戦を挑んだところで、投げ飛ばされるだけですわよ!」
がら空きのボディ目掛けてタックル! そのまま体制崩せば蹴りを一発!!
「あっ!?」
完全に機体が浮いて、踏ん張ることができなくなったならっ!!
「このようにっ! エベレストアバランチっっ!!」
しっかりと、相手の両腕をつかんだまま、その場で高速回転っ!! 相手を振り回すことで遠心力が働くのでそれを利用して、さらに上空へと投げるッ!!
空中できりもみ回転しながら、地面に激突すれば……!
「衝撃で中にいる人間はノックダウンという訳ですわ」
無論のことながら、メカそのものへもダメージは大きいので、非常に強力な戦法になっています。
しかも弾薬もエネルギー消費も少ない!! なんてお得なのでしょう!!
前世で見ていたアニメのロボットの必殺技の再現……というには威力も格好よさも劣りますが、まぁ良しとしましょう。
アイビーさんも完全にノックアウトしてしまったようですし……ここからは座学の話になりそうですわね。
さてさて、アイビーさんも目を覚ませばワンオンワンの、私リーリエ流聖機士戦闘の在り方を刻み付けようと思った……のですが――。
「えー、まずいくつか聞いていいかしら」
「え、えっと、どうぞ――」
リーリエさんがおずおずと答えるのですが、えぇ聞きたいのは大したことではありませんの。
「……カリン、なぜ貴女がここにいるのです?」
ワンオンワン、一対一でやることなのですが……。なぜ彼女は私の視線の先にいるのでしょう?
「はいっ、リーリエ様がそこにいるからです」
「……そうですか」
答えになっていない気しかしないのですが、まぁいいでしょう。
えぇ、恐らくですが彼女は私の護衛としての発言でしょうから。
「では、ウィリアム王子、貴方は?」
「暇だからですね」
暇だからで来るのやめてくれませんか? いや、まぁ学園の男性の中ではかなり親しい仲ではありますが、学園の男性という括りでですわよ? 私そんなに会った記憶もありませんわよ?
でもまぁ、まだ理解はできます。
「……アレックス王子、貴方は」
はっきりと言って、まだ一度しか会ったことがない方ですわよね?
お兄様の方とは友達と言えるかもしれませんけど、貴方完全に赤の他人ですわよね?
「終わったら、俺と戦えよ」
「ナゼナニホワイ?」
いや、真面目にいきなり……あれですの? 目と目があったらバトルとかそういう野蛮な風習の方ですの?
いや、それこそ名を残す活躍何てずっと前の話で――。
「俺は最強にならないとだめなんだ、強くなるためならなんだってする」
「……あの、それがどうして私と戦うことに?」
と言いますか、貴方が最強になる必要なんてどこにあるのです?
「貴様のあの戦い方、騎士団の誰もやってない素晴らしいモノだった」
「アッハイ」
いろいろやりすぎましたわね、はい。
……武装のオーダーいろいろ頼みすぎて、一周回って戦場に合わせて暴れまわる変態仕様ですけれど。
「……故にお前の戦い方も学ぶ必要がある、それだけの話だ」
……やっぱりそれをしなければならない理由が分かりませんわね。
「で、どうして最強に?」
「なりたいから以上に理由がいるのか?」
「これが若さって奴ですわね」
「?」
「お気になさらないで」
えぇ、小学生の男子みたいな……、いやまぁ年齢的にはまぁおかしくはないのですが。
……王族に生まれたことが不幸になってる方って奴でしょうか。