第四十話 あなたは嘘が得意じゃないのね
食卓に並ぶ料理の数々。その中でいつもと違うものを見つけ、思わず口に出す。
「あら、主。今日は少ないのね。足りるかしら?」
「あ、うん。あまりお腹空いてなくて……」
主の食べる量が少なかったわ。お腹空いてないのね。いつもお仕事で疲れていると思うのだけど、今日は私が少し手伝ったから、いつもよりは楽だったかしら?
いただきますと全員の声が揃えば、みんな食べ始めたわ。今日はオムライスね。上手にできてるじゃない!
「苺、上手くできてるわね、さすがだわ!」
「あ、そう? やった。ありがとう!」
昔から教えていたけれど成長というものは素晴らしいわね。
なんだか誇り高い気がするわ。なんてね。
幼い頃から苺にお料理は教えていたわ。懐かしいわね~、私がお料理をしていたら手伝いたいって言ってきたの。一人で作るのは苦じゃなかったけど、大変な時もあったわ。だからすごく嬉しかった。
苺は気が利くわ。それに優しいの。苺の父親に似たのかしら?
苺の父親、つまり私の夫はいないわ。
いない、死んでしまったのかしらね。……分からないわ。記憶がないの。
きっとかなり辛いことがあって、自分で消してしまったのかしら。
……私が、そんなことするわけないと思うのだけど……。
どんなに辛いことがあったとしても、愛していたのなら絶対そんなことしない。
どういうことなのかしら……。
「苺ママさん、どうかしたの?」
ぼーっとしていたら主に心配されちゃったわね。
「なんでもないわ、少し考え事よ」
「そう……」
ご飯もあと少しね。早く食べちゃいましょ。
ご馳走様でしたと声が揃う。
「主、本当に足りた?」
「ああ、うん。大丈夫」
大胆に目を逸らす主は、席を急いで立った。
その時、お腹の音が大きく聞こえたわ。
「……ほら、お腹空いてるんじゃない、何か作ってあげるから待ってて」
「……うん」
主はいつもお仕事頑張っているからね。ご飯くらい美味しいものを食べて、元気出してほしいわ。
さて、パパっと作ってしまいましょ!
そうだ、あとで苺とタイムさんにお礼を言わないとね。お仕事でお料理できなかったから。
「……なんで嘘ついたんだろう……?」




