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明日、世界が滅ぶとしよう。  作者: 弦創ユヅキ
オリキャラ²
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序章となるモノ

始まりました。よろしくお願いします。

 ――これは幼い頃からの夢だったといえる。他の誰かに語っても馬鹿にされる夢。そして決して叶うことのない夢。叶うはずがない夢。ずっと描いてきた私の夢。


 寝ても覚めても私は描くことをやめなかった。気付いたら部屋は夢で埋め尽くされていた。床が見えないほどに広がった夢を片付けられず、私はいつまでも埃と夢と過ごしていた。


 何年も信じてきた夢を、私は誰かに馬鹿にされようが気にしなかった。だってこれは私の夢。私だけが見れる、世界一素敵な物語。他の誰かなんて背景にも描かれないの。



 物音が響き、恐怖で支配される家の中、自分の部屋だけは私の世界。鍵のない部屋でも誰も入ってこれないの。

 だってここは私の世界。一度も聞いたことのない声で賑わって、直接見た事のない顔が並んで、大好きな人たちが隣にいる世界。

 でも、私の描く夢はいつまでも夢のままなんだろう、とふと思う。いくら努力をしたところで、部屋の外の世界が変わらない限り、私の夢はただの妄想として片付けられる。埃と一緒に捨てられる。


 ……でもね、私あきらめが悪いの。私の夢を馬鹿にしたくらいで、私の夢が壊れるとでも?

 舐めないで。私は夢を信じ続けるんだから。そして夢が叶ったとき、あなたたちを一番に見下してあげる。信じてきた夢たちと一緒に。








 ――それは数年後だった。私は誇らしげな笑みを浮かべて自慢してやった。












 ――ほら、叶ったでしょ。





 それは私の信じた夢。硝子より薄く頑丈な壁で手の届かなかった夢。あなたたちが叶わないと馬鹿にした夢。

 ねえ、見て。私の夢。とても素敵な物語を。

 私の夢よ、手を取って一緒に行きましょう? あんな汚い世界なんて捨てて、素敵な世界へ堕ちていこう。

 夢の世界と私のいる世界。決して繋がることのない世界同士。行き来ができないって言われてきたけれど、私にならできる。




 ――だって私は、夢を叶えられた。






 悔しそうなあなたたちの顔が目に浮かぶ。

 そんなの知ったことじゃない。私はこんな世界捨ててやる。

 私の夢を馬鹿にする世界。私の夢を埃と一緒に捨てる世界。私の夢を、叶えさせない世界。……全部、捨ててやる。




 ――私にだから、できること。






 私は今、目の前の人生を、漫画を読む感覚で見ている。一歩引いたところから干渉しているだけだと。

 信じたくない訳ではない、むしろ嬉しくて全世界中の人類に自慢したいくらいなんだよ。

 ……でも、自慢はしない。「当たり前」になってしまったから。当たり前のことを自慢するのは馬鹿らしいでしょう? 私は呼吸ができるんだと言ったところで、誰もそれを羨ましいと思わない。


 だからせめて、このまま、自分だけのものになっていればいい。当たり前のことを維持して、自分だけ優越感に浸っていればいいの。

 

 私はこの場所で、「夢」を守り続ける。現実となった夢を守る。これは私にしかできないことなんだから。

 全部私が守ってあげる。この夢を望んだ私が、愛するこの夢を。



 ……私の愛する、子供達を。




 一番最初に出会ったのは、女神のような悪魔。


 二番目に出会ったのは、悪魔のようで純粋な心。


 三番目に出会ったのは、純粋な心で微笑んだ。


 四番目五番目と続くものに、私は毎回心を躍らせた。 




 夢が叶った場所と私のいた場所は異なる。決して手の届かない場所へと私はたどり着いてしまった。



 これは始まりの物語。私と夢の物語。



 ――物語の、第一話となるもの。

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