合理的な家族
「ママ~~、パパが庭で倒れてる~。」
それは夏の盛りの正午前、ご飯の用意も佳境の時に、息子の声が聞こえてきた。
「もぉ~~何でこんな忙しい時に倒れるのよ~~。ねぇ携帯そこにあるからドクター呼んでおいてっ」
「わかった~~」
そして私は、お昼ご飯の仕上げにかかった。
「ママ~~、ドクター来たよ~~」
お昼を食べ終えてお皿を洗っていると、再び息子の声が家に響いた。
「そぉ~~。今手が離せないから、パパのところに案内してあげて~~」
「は~~い。」
トタトタと、息子の足音が遠ざかる。
私は次の食器に手を伸ばした。
洗い物を終え様子を窺いに行けば、日陰でドクターに診察される夫がいた。
「どうです様子は?」
「どうも暑さにやられた様ですね‥‥。でも精密検査をしないと、詳しいところは何とも‥‥。
このまま連れて行っても大丈夫ですか?」
「はいさっさと連れてちゃってください。邪魔なだけなんで。」
「かしこまりました。
では、アンドロイドファミリーのご愛顧、いつもありがとう御座います。今回の修理代金は保証期間内なので大丈夫です。
ところで、息子さんの定期メンテナンスが来週ですが、どうしますか?」
「そうね~、もう買い換えようかな~。
今度は女の子がいいかな~、息子はもうなんか飽きたから。」
「了解しました、後でカタログをお送りします。では息子さんも連れて行きますね。下取り価格が出たらメールでお知らせします。
何か使い回したいパーツはありますか?」
「あっ、目をお願い。あれ高かったんだから。」
そして二人は、ステーションワゴンのトランクに詰め込まれた。
親が我が子を手にかける事件のニュースなんかを見ると‥‥ 周囲からは仲の良い親子に見られてて、着飾せたその子を使ってSNS‥‥ こういう感じなのかなと‥‥
‥‥しかしあながち、こういう未来が遠くないような気が‥‥
駅の方は、ステーションワゴン
ステーション=駅ということで、何とか一つご容赦を‥‥‥