TS少女が吸血鬼少女と百合百合する話
「んんっ……あっ、そこっ……やっ…………」
可愛らしく、情欲を掻き立てるような声が、カーテンが締め切られた部屋のベッドの上で断続的にあがる。
部屋は丁度目の前にいる人影がようやく分かるくらいの明るさで、それがより一層そういう気分にさせようとしてくる。
……だけど、ボクは屈服する訳にはいかないんだ。
ここで堕ちたら、待っているのは搾取されるだけの日々。
「ん、はむっ…………」
「ひゃっ!?」
突然の耳噛みに、僅かな痛みと快感が合わさったような刺激が身体を貫いて、嬌声があがる。
ボクの耳を甘噛みするのは、とある事情で拾った少女。
見た目でいえば超絶美少女なのだが、そんな彼女は吸血鬼だ。
なんでも、一日一度は血を摂取しなければ、死んでしまうファンタジー種族らしい。
だが、彼女は男性恐怖症で女の子の血しか受け付けないらしい。
……なぜ、そんな少女とボクが一緒にこんなことをしているかって?
ボクは、元々は日本で暮らしていた普通の男子高校生だった。
だが、交通事故で呆気なく死亡したのだが、それが神様がちょっとミスったとかいう理由で死んだらしいので、異世界に転移させてもらうことになったのだ。
だが、その時にも不具合が発生し、ボクの性別は男から女へと変わっていた。
当然にボクの相棒は消え去って、代わりに胸元に大きな脂肪の塊が……ということはなく、貧乳ロリっ子になってしまったのだ。
それから色々と紆余曲折を経て、彼女と出会ったのだ。
そして、かくかくしかじかありまして、現在、彼女の食事時間なのである。
「んむ…………ふふっ、顔赤い。……可愛いっ」
「可愛い……って…………言うな…………っ」
「そういう所も可愛い、よ?」
ベッドの上で仰向けになるボクに覆いかぶさり、逃げられないような体勢をとる彼女は、いつもこうして血を摂取しようとしてくる。
……というか、それだけの用事ならば指をちょっと切って、そこから湧き出る血を吸ってもらえば済む話なのだ。
なのだが……彼女は何かとこうしてスキンシップと称するには過激な接触を図ってくる。
元男としての記憶があるボクとしては何としても辞めてもらいたいのだが、彼女は吸血鬼。
力では到底叶うはずもなく、結局こうして女の子のような扱いをされることになる。
「ほら、こことか……」
「ひゃっ!?…………そんなっ……んっ、舐め、ないで…………っ」
意地の悪い表情で彼女は執拗にボクの首や耳を舐めてくる。
舌のざらついた感触がその状況を見えないながらも如実に伝えるようで、背徳感のようなものが押し寄せる。
「もう……っ、終わった、でしょ…………っ!」
実は、今日の分の血の摂取は既に終わっているのだ。
いつものように指を少し切って、血を舐めてもらうだけの、それだけで終わるはずだったのだ。
だが、今日の彼女はいつまでもボクの指を離すことなく、口に咥えて、舌を絡めて出し入れしたりとやりたい放題だったのだ。
そこで済めばまだ良かったのだろうけれど、それが原因で彼女のスイッチが入り、ベッドに押し倒されてしまっているのだ。
「…………まだ、お腹いっぱいじゃない。それに、まだ可愛い姿を、見たいから」
ペロリと薄紅色の唇を濡らし、ゆっくりと顔をボクの顔へと近づけて、
「〜〜〜〜っ!?」
チュッ、と互いの唇が優しく触れ合う。
息遣いが、やけに大きく聞こえてくる。
脳が痺れて、何も考えられなくなる柔らかさの暴力と、女の子特有の甘い香りがボクの理性を鈍らせていく。
止めないととボクが言うけれど、止められないとボクが言う。
どうしようもなく気持ちよくて、その快楽に逆らうことが馬鹿らしく思えてくるような感覚。
だが、ただでさえ限界ギリギリの許容量だったボクには、もう抵抗する精神力が残されていなかった。
それ故に、今日も許してしまうことになる。
そのボクの心境を察してか、彼女は焦らすように小悪魔的な笑みを浮かべていた。
蕩けた紅玉の瞳はボクをじーっと見つめて、「どうしたいの?」と目で訴えてくる。
それが彼女なりの意地悪だと、ボクは知っている。
だから、ボクは抵抗しない旨だけを目で伝えた。
すると、彼女は「ふふっ」と小さく笑って、
「〜〜〜〜っ!んっ…………っ!」
キスをしたまま、舌をボクの口へと滑らせた。
口の中まで彼女のものになってしまった屈服感、本来は嫌悪するべき感情のはずのそれだが、ボクは嫌じゃなかった。
もう、そっち側に精神が引っ張られてしまっているのだろう。
それからボクと彼女はあんなことやこんなことをして――――
「…………楽しかった。それに、今日も可愛かったよ?」
「…………もうお嫁に行けない。……行かないけど」
「もしもの時は、私が貰うから、大丈夫」
「…………バカ」
あんなことをされても、どうにもボクは彼女のことが好きらしい。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。