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卓上の対戦――2

 前書きカード紹介第七弾。今回も伊香保卯月対疋田昌司戦で使われたカードの紹介です。


 爆走ランナー・ファンタスティックアンカー


 地属性戦士族HP140の効果モンスターです。


 効果は二つで、一つ目が爆走ランナー1体を手札に戻すことで爆走ランナー1体をリクルートする効果。

 セルフバウンスですね。セルフバウンスというだけでなかなか強そう。召喚時効果を使いまわしたり追撃したりサクリファイスエスケープが主な用途になるのかな。


 二つ目は手札の爆走ランナーを墓地へ送ることで手札から召喚する効果。

 一つ目の効果でこのカードを戻してリクルートし、手札コストに召喚するのが基本でしょうか。

「私のターン、手札から《ジュエルウィッチ・フィア》召喚してドローして、さらにラルの効果でデッキからルビィ召喚。ルビィ効果。100ライフ払って《フラムビースト・ドッグ》に70ダメージ」


 ――伊香保卯月

 ライフ1900


 うぜぇ、リクルーターが低コストで除去撃ってくる。


「フィアの効果で200ライフ払って墓地からシストを手元に戻すよ?」

「どうぞ」


 ――伊香保卯月

 ライフ1700


「手元からアンバー召喚。アンバーを転移元に、1ターン目以降、HP70以上のジュエルウィッチモンスター1体。手札から魔法転移召喚。《ジュエルウィッチ・ほたる》。ほたるの効果。手札からカードを捨てて1枚ドロー」


 あまり良い引きじゃなかったのか、伊香保さんは引いたカードを見て苦笑いしていた。


「ああもう、素直じゃないなぁ」

「え? 何がですか?」

「ああもっ、いいから。墓地の《鉱石魔術・エンドオブオナー》効果発動。墓地のアンバーとこのカードを封印して、デッキから《鉱石魔術・アクアシフト》手札に加えます」


 心なしか微笑んでいるように感じるのがとても嫌な予感がする。


「そう、今は3ターン目。手札から魔法カード《鉱石魔術・アクアシフト》、手札のシストを封印し、このターンジュエルウィッチ魔法転移モンスターの魔法転移召喚回数を1回増やす。そして墓地の《鉱石魔術・アクアシフト》効果、このカードとマリンを封印して2ターン経過させる」


 ――5ターン目、伊香保卯月


「ほたるを転移元に魔法転移召喚。星のいの……。ふぅう。5ターン目以降、HP170以上の魔法使い族モンスター1体。……、《ジュエルウィッチ・ラピス》」


 召喚されたのは、伊香保さんのカードプロテクターと同じ少女が描かれた魔法転移モンスターだ。

 公式か非公式かはともかくMCGのプロテクターだったらしい。


「お、今、召喚口上っぽいの聞こえかけた気がしたぞ。伊香保さん召喚口上とか考えてたりするのか? いやぁ、実は俺もなんだよ。もうさ、いかにランギットさんかっこよく出すかって、まじで。はっはっは」


 何故か隣で対戦しているはずの広瀬がこちらへ入ってくる。


「お前はそっちやれよ」


 伊香保さんも少し引いているように見えるけど、貴女も同類な気がしますよ。


「広瀬の事は放っておいて、続けましょう」

「そうだね」

「いや、これはもうみんな召喚口上考えるべきだね」

「お前はそっちをやれ」


 溜息を吐いてから一度今の盤面を確認する。


 僕のフィールドには《フラムビースト・スネーク》が一体と《フラムビーストの火山地帯》、伊香保さんのフィールドは《ジュエルウィッチ・フィア》と《ジュエルウィッチ・ルビィ》、それから《ジュエルウィッチ・ラピス》がそれぞれ一体ずつとバックが二枚だ。


 今の時点で明らかに劣勢だが、これ以上押される前になんとか巻き返していかないと取り返しのつかないことになりそうだ。


 もうなってそうな気もするけど。


「いいかな?」

「ああ、どうぞ」

「それじゃあ、ラピスの効果で墓地のタイダルウェーブコランダム手札に戻します。手札から《鉱石魔術・タイダルウェーブコランダム》、墓地の《鉱石魔術・パープルアウト》を封印して2枚ドロー。さらに、フィアがいるので1枚ドローし、1枚捨てる。鉱石魔術が発動したのでラピスの効果。デッキから《鉱石魔術・スターリーラズリ》を手札に加え、手札からカードを2枚セット」


 全体的にサーチ性能が高すぎてなんというか、辛い。


「バトルフェイズ、ルビィで《フラムビースト・スネーク》を攻撃」

「はい、通ります」


 リクルーターが何で除去とアタッカー兼ねているのでしょうか、と問いかけたくなる。


「フィアで隼人君に攻撃」

「はい、通ります」


 ――篠崎隼人

 ライフ1930


「ラピス。ラピス、隼人君に攻撃」


 声に出してなくても口が小さく動いているので攻撃名も考えてあるようだ。

 何というか、本当に広瀬みたいなやつだなこの娘。


「はい、通ります」


 ――篠崎隼人

 ライフ1600


 《ジュエルウィッチ・ラピス》、微妙に打点が高いぞ。

「私はこれでターン終了」


 ――5ターン目、伊香保卯月

 ライフ1700

 手札3枚、手元4枚

 墓地8枚、封印9枚

 フィールド、《ジュエルウィッチ・フィア》1体、《ジュエルウィッチ・ルビィ》1体、《ジュエルウィッチ・ラピス》1体、セットカード4枚


 ――篠崎隼人

 ライフ1600

 手札3枚、手元9枚

 墓地7枚、封印0枚

 フィールド、フィールドカード《フラムビーストの火山地帯》


「僕のターン、手元から《フラムビースト・レオ》召喚。ドロー。手元から《フラムビースト・ハウンド》召喚。レオを転移元に5ターン目以降、HP100以上のフラムビーストモンスター1体。魔法転移召喚、《フラムビースト・ケルベロス》。魔法転移召喚成功時にデッキトップから3枚墓地送って送った枚数1枚につき攻撃力+50します。えーと、火山地帯は効果なくて、スフィンクス効果でハウンドとケルベロス攻撃力+200して、ドッグでケルベロス+50、ですね。ケルベロス効果。手元のエレファント墓地送ってこのターン終了時まで攻撃力+50、エレファント効果でハウンドとケルベロス攻撃力+40です。それで、《フラムビーストの火山地帯》効果発動、デッキからグリフォン墓地送ってケルベロス攻撃力+70して、グリフォン効果でフェニックス手元に加えます。ハウンド効果で手元のフェニックス墓地送って攻撃力+50、フェニックス効果でハウンド攻撃力+150と攻撃回数1回追加」


「えー、でも、うん。妥当か。《鉱石魔術・スターリーラズリ》発動。手元のカード1枚封印して、《フラムビースト・ケルベロス》破壊」


 目を思い切り閉じて息を吐いた。


「はい、通ります」


 静かに深く息を吐きながらケルベロスを墓地へ送る。


「ラピスが存在することで破壊したモンスターの効果は無効化され、デッキから1枚ドロー。ラピスの効果発動。封印されてる《鉱石魔術・エンドオブオナー》を墓地に戻す」

「ではバトルフェイズ。ハウンドで《ジュエルウィッチ・ラピス》を攻撃」

「墓地の《鉱石魔術・ボルカニックコランダム》と《ジュエルウィッチ・ほたる》を封印して《フラムビースト・ハウンド》に80ダメージ与える」


 二体しかたっていなかったから仕方ないかもしれないけど、ちゃんと攻撃を通してくれた西村さんは優しかったんだな、なんて。


「手札からエレファント召喚してターン終了」


 MCGはモンスターがたっていることが前提で進むゲームで、各ターンに二回、ルールによる召喚を行うタイミングがある。

 と言っても、エンドフェイズ時のものは任意だが。


 ――6ターン目、篠崎隼人

 手札3枚、手元5枚

 墓地16枚、封印0枚

 フィールド、《フラムビースト・エレファント》1体、フィールドカード《フラムビーストの火山地帯》


 ――伊香保卯月

 手札3枚、手元3枚

 墓地7枚、封印12枚

 フィールド、《ジュエルウィッチ・フィア》1体、《ジュエルウィッチ・ルビィ》1体、《ジュエルウィッチ・ラピス》1体、セットカード2枚


「私のターン、ドロー。ルビィの効果でライフ100払って《フラムビースト・エレファント》に70ダメージを与え、ルビィを転移元に3ターン目以降、HP120以上のジュエルウィッチモンスター1体で魔法転移召喚。《ジュエルウィッチ・アレキサンド》。効果でデッキから《鉱石魔術・アクアシフト》手札に加えて、フィアの効果、ライフ200払ってルビィ手元に戻します」


 ――7ターン目、伊香保卯月

 ライフ1400


「手札からアクアシフト発動。手元のルビィ封印して、ジュエルウィッチ魔法転移モンスターの魔法転移モンスターの魔法転移召喚回数1回増やす。あと、ラピスとルビィの効果発動。ルビィの効果でデッキからシスト召喚、ラピス効果でデッキから《鉱石魔術・スターリーラズリ》手札に加える。アレキサンドを転移元に魔法転移召喚。5ターン目以降、HP170以上のジュエルウィッチモンスター1体。《ジュエルウィッチ・クアロシリカ》。手札から《鉱石魔術・タイダルウェーブコランダム》発動。手元のカード1枚封印して2枚ドロー。クアロシリカの効果でそのフィールドカード破壊」


 まるで勝てる気がしない。デッキパワーが違い過ぎる。


「クアロシリカ効果、封印されてるほたるを手元に加える。カードを1枚セットしてバトルフェイズ。フィアとシストでエレファント攻撃」

「はい、通ります」


 《ジュエルウィッチ・シスト》の攻撃力が60、《ジュエルウィッチ・フィア》の攻撃力が70で《フラムビースト・エレファント》のHP150ある。

 だから事前に《ジュエルウィッチ・ルビィ》で削ったんだろう。


「ラピスとクアロシリカでダイレクトアタック」

「どうぞ、通ります」

「シストの効果でシストを手札に戻して、手札からシスト召喚。そのまま攻撃」

「通ります」


 ――7ターン目、伊香保卯月

 手札4枚、手元2枚

 墓地10枚、封印13枚

 フィールド、《ジュエルウィッチ・フィア》1体、《ジュエルウィッチ・クアロシリカ》1体、《ジュエルウィッチ・ラピス》1体、《ジュエルウィッチ・シスト》1体、セットカード4枚


 ――篠崎隼人

 ライフ910

 手札3枚、手元5枚

 墓地18枚、封印0枚

 フィールド、なし


「ターン終了」


 出来ることなら一矢報いたいけど、それが許されるかどうか。

 多分、今セットしたのはさっきの除去カードだ。


「僕のターン」


 流石にそこそこHPがあれば壁として機能するらしい。


「手元から《フラムビースト・スネーク》召喚、ドロー。手札からレオ召喚してレオを転移元に《フラムビースト・フェニックス》魔法転移召喚。効果で墓地のカード10枚デッキに戻して攻撃力300アップ。手札からフェニックス対象に《連撃のフラムビースト》発動。手札からケルベロス、手元からエルフェニックス墓地送ってこのターン攻撃力+80と攻撃回数1回追加」

「それに対して《鉱石魔術・スターリーラズリ》発動。手札1枚封印して《フラムビースト・フェニックス》を破壊。さらに《ジュエルウィッチ・クアロシリカ》とラピスの効果発動。封印されてる《鉱石魔術・ハーモニックオーラ》墓地に戻して、手札から《鉱石魔術・スターボウレイン》と手元からラル墓地へ送って《フラムビースト・スネーク》を破壊」


 向こうのハンドも切れてきたようだけど、ここで召喚すれば僕に次のターンはない。

 最初は展開力が高いのかと思ったけど、実際は全体的にこなせるようだ。


「ターンエンド」


 ――8ターン目、篠崎隼人

 手札0枚、手元3枚

 墓地13枚、封印0枚

 フィールド、なし


 ――伊香保卯月

 手札2枚、手元1枚

 墓地14枚、封印13枚

 フィールド、《ジュエルウィッチ・フィア》1体、《ジュエルウィッチ・クアロシリカ》1体、《ジュエルウィッチ・ラピス》1体、《ジュエルウィッチ・シスト》1体、セットカード3枚


「何にもないなら私の勝ちかな? 私のターンドロー。フィアの効果でライフ200払って墓地からアレキサンド手元に戻す」


 ――9ターン目、伊香保卯月

 ライフ1200


「すっごいこのフィアの効果使ってる気がする。フィールド離れてないよね、この娘」


 でしょうね、僕は何も出来てないので。

 それよりこの娘って……。


「シストを転移元に3ターン目以降、HP120以上のジュエルウィッチモンスター1体。アレキサンドを魔法転移召喚。効果でデッキから《鉱石魔術・フローライトゴースト》手札に加えて、墓地のスターボウレインとラル封印してデッキから《鉱石魔術・スターリーラズリ》も手札に加える。カード2枚セットしてバトルフェイズ。フィアでダイレクトアタック」

「どうぞ、何もないですよ」


 ――篠崎隼人

 ライフ840


「アレキサンドとクアロシリカでダイレクトアタック」

「通ります」


 ――篠崎隼人

 ライフ290


「《ジュエルウィッチ・ラピス》でダイレクトアタック」

「ありがとうございました」


 ――篠崎隼人

 ライフ0


「ありがとうございました」


 モンスター、HP50しかないけど《フラムビースト・ハウンド》たてておいた方がよかったろうか。

 でも、シストは実質二回攻撃可能で攻撃力も60ある。

 今のターン、伊香保さんはモンスターを召喚してないからどっちにしても負けてるか。


「ぼっこぼこじゃねえか十六位」

「広瀬お前、いい加減しつこい」

「違うよ広瀬君、可愛い女の子相手だから手加減してあげたんだよ。察してあげなよ。そうだよね、十六位君」

「細峰、お前もしつこい」


 僕をいじる二人は楽しそうに笑っている。

 僕は溜息を吐いて、デッキをシャッフルする伊香保さんの顔へ視線を向けた。


 プレイ中は対戦相手の一人、くらいにしか思っていなかったけど、こうしてみるとなかなか綺麗な顔をしている。雰囲気的には新人モデルみたいな感じだ。


「拗ねないでよ篠崎君、ストレージのカード、二枚くらいなら買ってあげるから」


 細峰に話しかけられ僕の注意はそっちへ逸れる。


「そうそう、負けた時はさっさと強化寄こせよって思っときゃいいんだよ」

「で、お前は勝てたのか? 細峰に」


 笑顔の広瀬を見据えて問う。


「はっ、そんなの当然……。負けたぜ。もうこれは専用フィールド確定コースだな」

「僕はお前が楽しそうで何よりだよ」

「お、なら俺はお前を名前で呼んでやろう。篠崎」

「はいはい、そりゃどーも」


 面白くもないのに不思議と少しだけ笑ってしまいそうだ。


「じゃあ私も篠崎君って呼ばないとだめだね、これは」

「最初からそう呼べよ」

「それじゃあ意味ねえだろ篠崎」

「何の意味だよ」


 適当に返して僕はもう一度伊香保さんへ目を向ける。

 話に入ってこないから何してるのか気になった。


 見てみると、たいして何かをしているわけでもなく、ただ、優しそうな顔で一枚のカードを見ているだけ、という。


 この娘は知っているのか?


 今回は普通にデュエルスペースだったけど、細峰がバトルフィールドとかいうところでMCGをやっている、という事を。


「なぁに卯月に見惚れちゃってんの?」

「いや、別に」

「そう」


 細峰の顔はまるで信じてないって顔だ。

 確かに僕も同じ立場だったらそうかもしれないけど。


 連戦する気分でもなく、僕はショーケースへと向かった。

 結局この後は、雑談に参加したりしたものの、ストレージを漁ったり、対戦を眺めたりして解散となった。

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