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進む日常

 前書きカード紹介第五弾。今回は伊香保卯月対疋田昌司戦で使われたカードの紹介です。おまけ程度に二枚紹介しますね。


 ジュエルウィッチ・ラピス


 天属性魔法使い族HP420の魔法転移モンスターです。


 魔法転移召喚の条件は5ターン目以降、HP170以上の魔法使い族モンスター1体です。


 一つ目は誘発効果で、魔法転移召喚に成功した場合に墓地封印からの鉱石魔術カードをサルベージする効果です。おいおい紹介していくと思いますが、鉱石魔術共通効果で封印されていくので対象は多いです。


 二つ目も、というか、効果四つ全部誘発効果で、自分のターンに鉱石魔術カードが発動した場合鉱石魔術魔法をサーチする効果です。同名縛りはないのでなかなか便利だと思うのです。


 三つ目は相手のターンに鉱石魔術カードが発動した場合に、封印されている鉱石魔術魔法をデッキに戻す効果です。自身の効果で鉱石魔術カードのサーチが出来るので長期戦になると強いのかな、と言った感じ。サルベージを阻害しそうなときは発動しなければいいですし。

 基本、MCG自体がサーチ能力高いので実質遅効性サーチですね、多分。知らないですけど。


 四つ目が、フィールドから墓地へ送られた場合にデッキから鉱石魔術カード1枚を墓地へ送る効果です。

 実質サーチですね。強い。


 全体的にサーチ、サルベージ効果で埋まっているので手札補充は容易ですけど、除去能力は低め。切り札としてはちょっとしょぼいのかな、という印象になってしまいましたね。


 おまけ紹介。

 二枚目も伊香保卯月対疋田昌司戦から。


 爆走ランナー・マキシマム


 地属性戦士族HP190のモンスターです。


 それだけです。なのでおまけなのです。効果はないです。

 周囲の民家とは不釣り合いなマンション、その一室へ卯月は入っていく。


「あれ? 二人だけ?」


 卯月はソファの上で少年漫画を読んでいる青年、睦月に声をかけた。


「見てのとおり」

「悠里君は?」

「さあ、知らね。どっか行った」

「かえでちゃんも知らない?」


 大きめなビーズクッションの上で丸くなっている少女、水無月かえでに問いかける。


「知らない」

「悠里になんか用でもあったのか?」

「別に」

「そうだ、暇なら俺とバトルしようぜ」


 睦月はぱたんと、少々大げさに漫画を閉じて言った。


「外で一戦してきたばっかりなんだけど」

「奇遇だな、俺もさっき外でやってきたところだ」

「なら別にいいじゃん、それで」

「はあ、残念。だったらかえで、俺とやろうぜ」


 水無月かえではおもむろに起き上がると、眠たげな眼で睦月を一瞥する。


「……、やるなら、ゆーりと、やりたい。ゆーりに、見てて欲しい」

「ああはい、そうですか。卯月、お前も悠里だったらいい、とかか?」

「私は相手とかじゃなくて、今そんな気分じゃない」

「そうか、わかったよ」


 不満そうな様子を見せずにデッキを取り出すと、一人、シャッフルを始め、上から五枚めくってカードとにらめっこし、デッキに戻してシャッフルする。


 時には更にカードを引いたり、手元に置いたりなんてこともしていた。

 静かな部屋に、カードの擦れる音が響いて時は過ぎていく。




 次の日も、その次の日も、僕は西村さんはおろか、細峰さんとも話す機会がなかった。

 使うデッキはどうあれ、悪い奴じゃないならカードゲーマーとして迎え入れなければならない、なんて思ったからだ。


 と言っても、それは相手が望めば、だし、僕としては痛いのは嫌だからあの場所でやりたいというなら僕はやりたくない。


 そんな事を思いながら広瀬と馬鹿やっているうちに一週間が過ぎ、その間、向こうが話しかけてくることも、こちらから話しかけるという事も全くなかった。

 二人は、自分より弱い相手には興味がないということか、ガチ勢の考えることはよくわからない。


 何が悪いというわけじゃないけど、僕は少し苛ついているようだ。

 一軍、だとか、僕の考えた最強のデッキ、だとか、そんなのが負けて不機嫌になっている小学生のような気もする。


 ただ、言い訳できるのならさせてほしい。

 負けたから不機嫌なのではなく、相手にされないから不機嫌なのだ、と。


「しーのざーきくんっ」


 不意に両肩を軽く捕まれ、思わず身体が震える。


「なんだ、細峰か」


 十分という短い休み時間でもデッキを取り出し、シャッフルしていたので過度に驚いてしまったかもしれない。


 事実上黙認されている節はあるが、朝や昼休み、放課後は良くても授業の間にある十分休憩はだめだとする先生もいるからだ。


 細峰はわずかに口角をあげる。


「今日、そこのカードショップに知り合いが来てるんだけど、来るよね?」


 他のやつからすればただ遊びに誘っているだけのように感じるかもしれないが、多分これは、遊ぼうではなく、遊べ、という命令だ。

 命令されたと感じたことか、あるいは苛立っていたからか、睨みつけ、目だけでも僕は反抗する。

 細峰は勝ったと言わんばかりに自信に溢れた顔だ。


「MCGか? MCGなのか?」

「そだよー、えーっと……、広瀬君っ、広瀬君も来る?」

「行くっ! 篠崎も当然来るよな」


 MCGという釣り餌をちらつかせれば思いの外簡単に広瀬は釣れるらしい。

 自分の言うことは聞かなくても、何も知らない広瀬の言葉なら聞くとみて今来たのか、こいつは。


「それじゃあまた放課後に」


 僕にそう告げると女子グループへと混ざりに行く。


 女子というのはカードゲームやアニメなんかには子供のもの、みたいな調子で否定的なイメージがあるが、細峰はそれを隠しているのか、単なる僕のイメージなのか。


 その辺りを知るか知らないかで後々使えるかもしれないけど、今はどっちでもいいしどうでもいい……、というより、今は手札を切るタイミングではないと思っただけだ。


 カードゲームの強弱だけで対等に見られてないわけじゃなかったのはよかったけど、なんだかやはり気に食わない。多分、そもそもあわないんだろう。




 放課後、広瀬に連れられ学校から歩いて五分程のところにあるカードショップに来ていた。


 特に待ってろとも言われてないかったというのもあって、細峰を待ってもないし声もかけていない。

 ただそらもう、うっきうきの広瀬には悪いがあまり乗り気ではなかった。


 一応、本来はレンタルビデオ店だが、僕たちにとってはカードショップに変わりない。


 デュエルスペースではいつも見かける冴えない大学生や制服姿のさわやか高校生達がカードゲームをするなか、たまに見かける制服姿の中学生三人組がストレージに群がっている。

 僕も通っていた中学校の近くにカードショップがあったら絶対行ってたと思うので何も言えないし、声かけたってバトルしようぜ、しかでなさそうだ。


 冗談だけど。


 普段は男しかいないこの場所に、今日は女の子がいた。

 その娘は白い服に薄い桃色のスカート履いていて、サイドテールにされた艶のある茶色っぽい髪の毛を時折小さく揺らしながらショーケースを眺めている。


 細峰の言っていた知り合いなんだろうと、なんとなく察していたけど、僕は彼女を素通りし空いている椅子に腰を下ろした。

 彼女の方も僕たちを見向きもしない。仕方ないだろうけど。


 席に着いて何をするかと言うと特に何かをするわけじゃなく、デッキをシャッフルしながら広瀬と話すだけ。教室にいる時と何も変わらない。


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