11-10,奴隷が正義を語る姿は滑稽で
彼の最愛の妹が既に死んでいるという事実は私を実に喜ばせるものだった。ロイド様の隣で幸せになろうとした時、ロイド様にとって最愛の存在がまだ生きておりさらにすぐ近くにいたことは私にとって最大の痛手であった。呼吸をして体温のある本物が存在してしまっては偽物は視界にすら入ることは出来ない。汚物は輝いてはいけない。けれど、死んでしまった人間の代用品にならなれるのではないだろうか。
見上げたアルマは心底淋しそうだった。出会った時より随分と幼く見え殺人鬼とは思えないほどに弱々しい。
そうだ、殺人鬼。彼が殺人の依頼を受けそれを実行した理由がわからない。それに私が最も追求したい疑問にもかすれていない。彼は自分の掌を見つめたまま黙ってしまったがまだまだ彼の説明は序章であり、こんな収穫のない地点で満足されても困るのだ。
するどく彼の瞳を見つめすぎてしまっただろうか。彼は「あぁ、すまない」と軽く謝り話を続けた。
「俺は自暴自棄になって周囲の人間がどれだけ手を差し伸べようと前を向けなかった。妹が死んで0に戻った俺はもう1を生み出せない。神父様は再生こそが幼くして未来を失った妹の無念に泣く魂を救済する手段だと何度も教えてくれた。でも俺にとってはそれは裏切りに思えたんだ。あいつへの」
涙が垂れないように彼は上を向いた。長く美しい髪が揺れる。もしかしたら、もしかしたらだけど、彼の妹は彼のような髪型だったのかもしれない。
「未来を見るなんて、あいつのいない、あいつの知らない、あいつを知らない未来を生きるなんて、可哀想じゃないか。葬儀を済ませ、妹の肉体を失った俺は、何も食わず水も飲まず家に閉じこもった。睡眠にすら罪悪感をかんじた。体が飢えていく様子がよくわかった。水が欲しくて床をのたうち回った時に妹を近くに感じられたし、のたうち回る力がなくなり壁にもたれかかっていたはずがいつの間にか固い床に伏せていた時、罪滅ぼしが出来る気がして嬉しくてたまらなかった。幸福だとすら思えたんだ。でも、あと少しでこの苦痛に溺れながら死ねるのではないかって思った時に」
「思った時に?」
「人が尋ねて来たんだ。神父様や村の人は僕を説得し再生に向かわせようと何度も来てくれた。けれどその時あの家にやってきたのは見たことのない男だった」
おしらせ
申し訳ありませんが、更新が止まったり不定期になることが予想されます。理由は活動報告に書いておきますが、面白いものではないので読まなくても結構です。でも、人生に疲れていて自分よりも下層にいる人間を見て幸せになりたい人は読むと心が軽くなるかもしれません。とりあえず、ゴールデンウィークの間はお休みということにさせてください。




