2-1,まるで友達のような奴隷
奴隷たちの寝泊まりする部屋は豚小屋と呼ばれている。マスターのご子息がそう呼び始め、今では私達奴隷ですら自分たちの部屋を豚小屋と呼んでいる。
「豚は食べれるけどお前達は食料にならないなあ。俺は食ったことは無いけど奴隷の肉は酸っぱいらしいぞ」
おっしゃる通りです。屠殺で価値は見いだせない種族ですので、ご理解の程をよろしくお願いします。
仕事終わりの私達が首輪に鎖をつけられ帰る豚小屋は主の家にあるわけではない。仕事場のすぐ近くにあるマスターが所有する倉庫の中の一室だ。私は自分の飼い主であるマスターの家を見たことはない。
私達を買ったマスターは裕福さを身に纏ったような人物でわかりやすい程の高級感があるものを好む。宝石をごちゃごちゃと身に着け毛の長いコートの中には金ぴかのベルトが輝くため、派手を通り越して下品に見えやすい。一級品に囲まれていることが通常の様で、私達奴隷の方へは最低限の視線しか向けない。彼は手広くやっている人物であり、女奴隷の性商売小屋を私達のいるところの他に10件以上もっているだけでなく、男奴隷達が肉骨を削って働く工場も持っていれば、人体実験を主とする研究所も所有している。奴隷の転売もしているようだ。しかし彼の本職は芸術品の売買である。
マスターから私達の管理を任されているオーナーはでっぷりと太った低身長の男で、マスターの言われている通りに動けば安定して体重を増やすことが約束されている、安全地帯に居る人だ。ほとんど毎日顔を合わせることになる彼だが、頭が良いとはとても思えず、金額の0の個数以外のことを考えることは彼には難しそうだ。馬鹿な彼の元から脱走することは難しくなさそうに見えたが「損をしない奴隷活用術」という本がベストセラーとなりその内容が常識化してしまったため、物理的にも精神的にも逃げ出すことは難しくなってしまったようだ。
私達は豚小屋につくと首輪についた鎖の端っこを鉄格子に固定され、豚以下になる。ドアが閉められ鍵をかけられ足音が遠ざかったら、私達の時間が始まる。時々自分が人間であると勘違いをしてしまう女奴隷だけの空間。殴られる心配も暴言を吐かれる心配もない、殴る体力もなければ暴言を吐く体力もない奴隷達の時間。