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君は奴隷でぼろぼろで  作者: なみだぼたる
第2幕 奴隷は嘘つき偽善者で
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11-1,奴隷が正義を語る姿は滑稽で

 私はどうやら自らの命の恩人が他者を殺める現場を目撃してしまったようだ。


 アルマはロイド卿のように穏やかな慈しみがにじみ出る人物ではなかった。私に救いの手を差し伸べる優しさを持っているけれど闇を知っているかのような表情をし、淋しさを噛み殺すように話す人だ。けれど、殺人を犯すような人物には見えなかった。いや、出会って数時間しかたっていない彼のほとんど全てを私は知らないのだけれど。人間様のことをわかったつもりでいるなどおこがましいけれど。


 彼は自らを泥棒であると話していた。金品を奪い取るために強盗殺人の実行をしたというのだろうか。しかし、それにしては不自然だ。いくら住人の行動時間外である早朝であるとしても、自らが暮らすとても狭い村の中での実行は合理的であると言えない。この村は民家は少なく、村人全員が互いに知り合いであることが予想される。自らの存在を他人という役者に出来ないのだから、隠ぺいや逃走には不利な状況だ。


 私は血の滴るナイフを持った彼を見て一瞬だけ軽い喜びを得たが、私はこれから彼と行動を共にするのではなくこの彼の家から持ちだした大荷物を持って少しでも離れた場所へと移動するのだから、彼の弱みを握ったところで何も意味がない。


 そのままこっそりとバレないように通り過ぎようと思っていた。恩人が泥棒であろうと殺人鬼であろうと、私にはもう無関係なのだ。


 ちらりと彼の横顔を見る。冷静だ。罪悪感に曇りもせず、焦燥に青ざめてもいない。しかし冷酷さは感じなかった。その濁った表情は我慢だろうか、諦めだろうか、己への失望だろうか。私はその時初めて彼を美しいと思った。


 しかし私はどうやら運に愛されていない。奴隷に幸運など吐瀉物の中から金銀財宝を探すかのように不似合いであるけれど。まさに今、この場から立ち去ろうと足を動かした瞬間に「ご苦労だったね」と知らぬ声が聞こえて来たのだ。私は太い木の幹の後ろに身を潜めた。この殺人が逃亡奴隷である私のせいにされる最悪の場面も想定の範囲内で呼吸をしている。


 殺人現場の奥へと続く道、私が進みたかった方向から深くマントを被り目元を隠した人間が歩いて来たのだ。身長が高く広い肩幅を持っているようで、大人の男性であろう。さらにその奥、木材で作られた数分後に崩れ落ちてしまっても不自然ではないほどの町の句切りの外には馬車が止まっていた。この静かな世界で私は馬の走る音など聞いていない。私がここに来る前に既に止まっていたのだろうか。


 私の目にその馬車は非常に不気味に映った。飾り気もなければさほど大きくもなくブラウンの質素な馬車だった。しかし、青毛の馬は毛並みも筋肉も美しく、馬車にまるで似合って居ない。馬があまりにも美しいせいで、隙間なくきっちりと閉められた馬車のカーテンの中に危険な香りを感じてしまう。


 男は余裕たっぷりのゆっくりとした歩調でアルマに近づいた。私はさらに身を小さくした。


多忙につき不定期更新期間に入ります。平成もあと一カ月ですね。年号が変わろうと生ごみの私が生きやすくなることはないと思いますので主人公のカラちゃんに託そうと思います。

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