表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は奴隷でぼろぼろで  作者: なみだぼたる
第1幕 奴隷は愚かで強欲で
6/145

1-6,歔欷の預言者との約束

 彼は言った。名も知らぬ預言者は言った。無残な死を遂げる私に言った。


「1年後、お前の人生は大きく変わり始める。そして3年後の冬、お前は大切な人を守るために命を落とす」


 彼の言葉から私の3回目の人生がはじまることとなる。


「3年後? 私が死ぬまでたったの3年しかないの? 私はまだ若いのに? きっと子どもなのに?」


「あぁ。お前は自ら望んでそれを選ぶんだよ」


「あ、でも、ないわ」


 私は首を横に振った。気の強い自分を演出しようと意地悪く笑って見せた。


「私は命を懸けてまで誰かを守りたいなんて思わないもの」


「思うんだよ。お前はそれを幸せだと言い張った。お前の決意もあいつの意思も堅かった。誰の静止も説得もお前たちは聞かなかったんだよ」


 静寂が私たちを包んだ。この部屋はそんなに広くない。1人で使うには贅沢で2人で使うには狭いベッドと小さな棚、それだけで部屋のほとんどは埋まっている。壁に掛けられた鏡も、使い古された寝具も、ぎしぎしと音のなるフローリングも、この部屋の安っぽさを物語っている。そう、私は娼婦ではなく奴隷なのだ。明日客やマスターに殺されるかもしれない奴隷なのだから3年後まで生きていられる保証をくれているかもしれないなんて何たる幸運だというのだろう。喜ぶことが普通だったのだ。


 彼は私にこう言った。


「今からいう俺のお願いを聞いてほしいんだ。そうしたらお前とあいつの未来を変えられるかもしれない。どうか、どうか、あいつを救ってくれ。お前ならあいつを救えるんだ」


 私は彼のいう「あいつ」がうらやましくてたまらなかった。この予言者が回避したい死は私の死ではないのだ。


 でも、私はうなずいた。


 私が自らが死亡する未来を回避することができたら、私は私が命を懸けてまで守りたいと思う大切な人とずっと一緒にいられるのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ