7-8,Good luck to stupid slave!!
背中を撃たれた私は案外落ち着いていた。撃たれた私を目の前で眺めるサキカも落ち着いており、倒れこむ私を素直に受け止めていた。
「駄目だよ」
サキカはそう言って私の頬を撫でた。
私の痛覚はおそらく奴隷になってからの年月により鈍くなっている。私は痛みよりも血液がまるで心臓そのものであるかのように脈うって身体から流れ出していく感覚に、溺れて窒息してしまいそうだった。
私は一回目を閉じた瞬間、おそらく意識を失ってしまったのだろう。次に目を開けたとき、私はサキカの上から離れていた。おそらくオーナーの部下にとらえられ押さえつけられている。おそらく、というのは私の頭に純白のレースのヴェールが何十枚もかぶっているかのように眼球をどんなに動かしてみても視界が白かったのだ。その上体中が痺れ自分の体勢すらもわからない。ただ脳みそから血液が抜けていく感覚と内臓そのものを吐瀉物に変えてしまいたいような吐き気がした。
誰だろう。誰が私を撃ったのだろう。マスターだろうか、オーナーだろうか。いや、ロンド様なんだろうな。サキカを守るために全てを捧げると、あなたは言ったのだから。
男達が轟く大波のように何かを話している中、女の声が聞こえて来た。おそらくサキカの声であると思うのだが、私自身の声であるようにも聞こえた。
「馬鹿ね、本当に」
綿のような雪が水に沈むような声だった。本当に、馬鹿だ。
私は今度は完全に意識を手放した。
サキカ、あなたは私の欲しかったものを全て手に入れるんだね。私の暮らしていた町はもう滅び、奴隷の所有権を譲渡してもらえるほどの裕福な人間も知り合いにおらず、親しかった人間も家族も銃声と凄まじい金切り声の中皆死んでいったか人間を捨てた。私の地獄は人間であった時代からもう決まっていたのかもしれない。
Episode 7 Good luck to stupid slave!! end




