7-6,Good luck to stupid slave!!
「当然ですが、既に亡くなられているベロニカさんに面会させることも、事実伝えることも出来るわけはなく、父様や秘書達は必死になって誤魔化しました。こちらも警察沙汰にすることは望んでおらず内密に終わらせたいからフォーサイス家に任せてほしいと。しかし、当然それに彼が納得をするわけはなく、カラちゃんをすぐには迎えに行くことは出来なかった。カラちゃんの伯父は当時貧困層の間で流行っていたドラッグと酒に依存していて金がなく、ドラッグを買い足す金欲しさに、カラちゃんを売ったんだ。カラちゃん、僕を許さないでくれ。僕とフォーサイス家がカラちゃんを奴隷にし、ベロニカさんを死なせてしまったんだ」
「父様はその後は?」
「お父様はカラちゃんが奴隷としてお金に変えられてしまったことを知り、精神がおかしくなってしまったんだ。フォーサイス家としたら狂ってしまった彼は都合が良かった。数年間精神病院に入院させ、今は田舎の村で1人で暮らしている」
「兄様のその後は?」
「お兄さんはいつまでたってもベロニカさんに会わせないフォーサイス家に不信感と嫌悪を抱き、自分でカラちゃんを探すとカリンに別れを告げ寮を去ったよ。入院中の父親のことだけはお願いしますと言ったが、数カ月後には入院費が送られてきた。今でもよくお父様の所に顔を出しているそうだ」
「じゃあ生きているですね」
今、舞台はもっとも感動するシーンを演出しようとしている。花が舞って居るかもしれない。上空を妖精が飛んで虹がかかるだろう。「よかったね」とサキカを見て観客は感動の涙を流すのだろう。舞台の端っこにいる肉片の私は引き立て役だろうか。惨めで無残で無様な私が居ることによって彼女は無限に輝き無限に舞うのだろう。
「マスター、サキカさんをお譲りいただくことは出来ますか? いくらでも払います。仕事の契約でも出来る限りのことをしましょう。人格者であり頭の良いあなたと一緒ならきっと僕も良い仕事ができる」
マスターは紳士がまだ手を出していないというのに彼の手を強く握り上下に激しく振った。
「もちろんでございます。今まで強欲な偽物が騙そうとしていたのですから当然でございます。しかし契約に関しては後日、ということで。契約書等もございますし、お互いにこれを良い縁としたいですから」
紳士は再びサキカに向き直り、片膝をついて彼女の手を取った。
「やっとカラちゃんをあなたのお父様とお兄様の所に連れていくことが出来る。これからはずっとあなた達の傍にいることが出来る存在ですと、会わせることが出来る。そうしたら、もう一度ベロニカさんの遺骨の前で、お父様とお兄様と共に僕とフォーサイスの罪を聞いてほしい。許さなくていい。罵って蔑んでくれ。僕が一生をかけて、全てをかけて、君とその家族に償いをするから」
サキカは、深くうなづいた。彼の贖罪を受け入れたのだ。
「それでは」
そう言ってマスターが紳士の横に設置されたテーブルに木箱を置いた。「これは?」と聞く紳士に対し「お開けください」とマスターは言う。
中に入っていたのは拳銃だった。
「愚かで強欲な身の程知らずを丁度処分しようと考えていまして。この奴隷は卑しくもあなたを騙そうと必死になっていたようですから、あなたの手で処分を下せばお気持ちも晴れるのではないかと」
臆病な私は一発の弾丸で私の心臓を貫き息の根を止めてほしいと願っているのに、私の心臓が「まだ生きていたい」と暴れている。吠えている。
私は、誰かに愛されたかった。大切だと思われたかった。




