7-5,Good luck to stupid slave!!
「父と母はその元々養子であった男に強い罪悪感を抱き警官に引き渡すことが出来ませんでした。自分たちの確認不足と判断ミスが彼を殺人に至らせたのだと思ったそうです。その為、本当に申し訳ありません。申し訳ありません」
ロンド様は立ち上がると椅子に腰かけるサキカを前に膝をつき頭を下げた。彼の償いが始まる。サキカが息を飲む音が聞こえてきそうだった。私はもうなんの関係もない傍観者だった。
「僕の両親は養子であった彼に名前を変え場所を与え、人生を新しくやり直させようとしました。殺人という彼の罪と現実をなかったことにしようとしました。その為には彼は死に、違う人物として始める必要があります。僕は父の書斎に呼び出されました。その時、僕はベロニカさんが我が家に訪れていたことも殺されてしまったことも知りませんでした、それは本当です。そして父は僕に言いました」
紳士は更に深く頭を下げた。絶えず流れる涙がサキカの足元に跡を作る。サキカの元々悪い顔色が急速に青くなっていた。どこから見てもわかるくらいに膝は上下に激しく震え、両手を交差させるようにして上半身を抑えている。
「父は僕に元々養子として育てていた人物の存在を説明し、彼とベロニカさんが偶然にも出会い同じ馬車に乗ったことを話しました。そして父はベロニカさんが彼を殺してしまったと僕に教えたのです。彼がベロニカさんを母と間違え口論となりベロニカさんは彼をはずみで馬車の窓から外へ向かって突き飛ばしてしまったと。そして父はカラちゃんとカラちゃんのお父様とお兄様を逃がしてくるようにと僕に伝えたのです。原因はフォーサイス家にあったとしても、由緒正しき貴族の元養子を殺してしまえばもう普通の生活はおくれなくなるからと。その当時、裁判にかけられるほど悪質な新聞が多く出回っていたことは確かでした。悪魔狩りとして多くの人間が一般人によって処された事実もありました。僕はすぐさま向かおうとしたのですが、何も知らない妹のカリンが「カラちゃんにあげて」とジャムを渡してきて、僕はそれを持って馬を出しました」
マスターが大きな声を出して話を止めた。
「ロイド卿、自身に不利が被ることをここでお話しする必要はございません。私が今日ここにあなたをお呼びしたのは、嘘つき者の奴隷の存在をはっきりとさせ、あなた様が探していた本物の奴隷をあなた様に差し出すためです。それは我が店の奴隷がロイド卿を騙していたことへの償いでもあります」
「お心遣い、ありがとうございます。しかし、僕はここで全てを告白すると覚悟を決めて今日目を開けたのです。あなたの所有する場所を借り僕のわがままを付きとおすことをお許しください」
そこまで言われてしまえばマスターもひきさがる他なかった。マスターとしては紳士が奴隷に罪悪感よりも優越感を持っていてもらった方が金になるという考えだったのだろう。
「僕はカラちゃんの家へと行き、カラちゃんにジャムをあげてキッチンへと誘導し、お父様に僕の父から聞いたことをそのまま伝えました。しかし、お父様はベロニカ様を心から愛していらっしゃいました。ベロニカ様を置いて行くことは出来ない上に彼女の口から真実を聞きたいといいます。罪を一緒に償いたいと。しかしカラちゃんとお兄様を危険な目に合わせるわけにはいきません。お兄様は充分な年齢があったため一旦はフォーサイス家が所有する寮に入れることにし、カラちゃんは伯父の家に預けることになりました。もう何十年も交流のない伯父だったそうですが、面会や状況の確認が終わり次第すぐに迎えに行くつもりでした。隠れてベロニカさんを支えつつ、遠く離れた町で三人で暮らそうと思っていたのでしょう」




