7-4,Good luck to stupid slave!!
「フォーサイスの屋敷に到着し、御者が馬車の扉を開けたその時、丁度その男はベロニカさんの首から手を離した時だったそうです。恐怖と絶望をそのまま固めたような顔をした彼女がピクリとも動かない様子が御者の目に映り、彼は男を取り押さえると使用人達を集め、そして父を呼びました。カリンの、妹の専属の医者も呼びましたがベロニカさんの心臓は既に止まっていました」
サキカは握っていたロンド様の手を離し、自分の胸を両手で抑えた。「母様、母様」と口が動いている。
ロンド様はその様子を見て続きをなかなか話せないでいた。おそらくサキカはもしかしたら母親は死んでしまったかもしれないと思っていたが、生きていてほしいと思っていたのだろう。
馬鹿なオーナーは話しの続きが気になり紳士に向かって礼儀正しい口調で催促をした。マスターがそれを見て舌打ちをしたが、すぐに紳士に向かって眉をさげた。「ごめんね」とロンド様はサキカと目を合わせて謝り、話は続けられた。
「拘束された男は僕が生まれる前フォーサイスで暮らしていた者でした。僕の母親は不妊に悩んでおり、跡継ぎをなかなか作ることが出来ない事を気にしていたそうです。そして養子に迎えたのがまだ幼かった頃のこの男でした。仕事が忙しい男と病気を持った女の間に生まれた子どもで、両親ともに優秀な頭脳を持っていたことから、僕の父が高額な医療費と引き換えに彼を引き取ったのだそうです。しかし、養子を引き取ってから5年程たち、不妊治療の最先端医術を持つ医者が海外からやってきて治療を受けた結果、母は僕を妊娠することに成功してしまいました。父や母は善意から本当の家族の元にいることが幸せであろうと考え、医療費を継続して払うことを約束し彼を元の家へと帰しました。しかし、彼の帰った家には父親と自分の母親ではない女と知らない子どもが3人いたそうです。母親が病院から帰ってくることが出来ないことをいいことに、父親はその家で他の女と子どもを作り暮らしていました。女は自らの子ではない彼を可愛がるはずもなく、また毎年送られる多額の医療費により仕事をやめた父親も彼を疎ましく思い、家に居場所などなかったようです。その後も過ごした環境の悪さから学業や就職も思う様に行かず、男は自らを捨てたフォーサイス家への恨みを年々深くしていったといいます。」
「じゃあ、私の母様は」
「はい。おそらく暗い馬車の中で僕の母親と間違えたのだと思います」
サキカの目から大粒の涙が零れた。私にはそれがロンド様の罪悪感を深め自分に有利に事を進めるための偽物にしか見えなかった。3人目のカラが突然現れて、ロンド様が探していたのは自分であると声高らかに主張してほしかった。私はいつまで夢を見ているのだろう。いや、死んだら、ずっと夢を見ていられるのだろうか。
苛立っているマスターと目があってしまったサキカは「続きを教えてください」と紳士に微笑んでいった。




