6-6,それは許されるはずもなく
私は肩に力を入れ呼吸を止めると落ち着いてにこりと笑ってやった。そして敗北を認めたかのように眉をさげてサキカの母親であるBの名前を聞きだそうとした。しかし情の欠片も持ち合わせていない彼女は私の期待には添わなかった。
「内緒。黙っていさせてね。私はこのチャンスを逃すわけにはいかないの。私自身のために」
笑い声が聞こえて来た。視線をずらせばシェルが自分の下腹部の方向を見ながら笑いをこらえていた。
「シェル、何? 何か言いたいことでもあるわけ?」
私が聞くと、大人しくて引っ込み思案で臆病な彼女は顔を上げた。気の強そうな憎たらしい顔だった。
「無様で惨めだなって。あの紳士が通い詰めるようになってから明らかに態度が変わって、私だけ特別、なんて顔してたくせに、他人の幼少期を勝手に武器として使ってたなんてあほじゃないの? 古参ぶってずっとこの豚小屋から追い出されていないこと誇らしそうにしてて、そんなあんたの最後がこんなに間抜けだなんて思わなかったってだけ」
「黙って」
ガラスを叩き割るかのような声で制止をかけたのはサヤだった。彼女は肩で息をして冷や汗を垂らしている。サヤに睨まれて断罪人気取りだったシェルは焦ったように口をつぐんだ。
豚小屋は今までにない空気に包まれる。トルパがようやく口を開いた。
「もう、今日は全員しゃべるのをやめよう。人間様が到着した時に奴隷として万全な状態を作っておくことが望ましいんだから、サキカもカラも何も話すべきじゃないんだから、全員で黙っていよう。カラの行動が正しかったかどうかなんて奴隷が考えること自体無意味だし、サキカが語ることの全てが本当であるかもわからない。判断を下すのはいつだって人間だよ。思い上がっちゃいけない」
普段あまり口を開かないトルパが珍しく何かを語るときは他の誰にもない説得力がある。私達はもう誰の顔も見ず口を閉ざした。
それから大して時間もたたずにオーナーが数人の部下を引き連れやって来た。顔色が悪い上に服装が乱れたままだ。アルコールの匂いがするが彼の顔は青ざめている。
彼らは私とサキカの鎖だけ外すとタイミングをずらして私達をそれぞれ連行した。サキカが先。その後数分後に私。
連れられて到着したのはいつものあのベッドのある私が体を売る部屋だった。マスターの到着を待てということだろう。私の鎖を窓の格子に固定するとドアが閉められ鍵をかけられ、私は孤独になった。




