5-3,1つ目の回避
迎えの者はサヤ達を更に苛立たせた。私が、ではない。あくまでも迎えの者が彼女達の機嫌を悪くさせた。鎖の錠を外す際にその人物が私に四角く折られた布を渡したのだ。開いてみればそれは新品の純白なワンピースだった。装飾は裾のレースしかなく生地も相変わらず薄っぺらいが、奴隷が着るにしては上質に思えた。無知な私が想像する下層の娼婦とはこんな格好をしている。
「例の客の相手をする直前に着替えろ。マスターに恥をかかせるなよ」
妬みの視線が私を取り囲むように突き刺さった。私は優越感に酔いしれた。新品の服などなんと珍しいものか。この服を着るにふさわしい奴隷はこの世で私一人かもしれない。
舌打ちが聞こえてきた。どうせサヤだと思っていたのだが、方向的に違った。それはエンドかトルパどちらかが出した音で二人共鋭い目つきでこちらを睨んでいた。二人共、いや、ここに居た全員、現在も未来も諦めていますなんて顔していた癖に。私は筋が通っていない奴が嫌いだ。奴隷は大人しく自分の生ごみ具合を認めていただきたい。どうせお前らは明日にでも明後日にでも死ぬんだよ。
何故私はエンドに魅力を感じてしまったのか、今やわからなかった。女としての外見的魅力の全てが失われている彼女は骸骨やミイラと同価値である。
私は軽い足取りで豚小屋を出た。私以外の4人は今までより仲が良くなっている気がした。豚の泥の付けあいっこブヒブヒ。一匹でも汚いというのに群れたら地獄だ。
しかし私が優遇されている奴隷であるとはいえ、人間という肩書を持っているだけの能無し価値無しの男達の相手をさぼることは出来ない。
「今日は機嫌がよさそうだね」
大貴族のお気に入りの女の子をランチを食べるお金で抱けるのだから、名誉のあまり自殺でもしていただきたい。
私は笑顔から淋し気な顔に変えて見せた。
「嫌なことがあったから、頑張って笑ってみるんです。上手く、笑えてますか?」




