5-2,1つ目の回避
起床の時間は下品な程に大きな鐘の音が倉庫内に響き渡る。最初の頃は脳みそが揺れるんじゃないかと思うくらいに不快だった。もう何も感じなくなったが。
私は今日、目を開けながら鐘がなるのを待っていた。一週間程前にもそんなことがあった。昨日紳士に頭を撫でられながら何かの毛皮に包まってお昼寝をしたため、睡眠欲が解消されていたのだ。あの時部屋に焚いてくれたお香は甘くて心地よくすぐに眠れてしまった。
今日は3人分の時間を紳士は予約してくれるそうだ。「美味しいレモンのタルトを見つけたから食べてもらいたくて」とも言われている。
起床の鐘が鳴るとほぼ同時に醜い女奴隷達は瞼をばっちりと開けた。既に体を持ち上げている私はやはり嫌悪の視線を向けられたが、初めてそこに嫌味が加わった。
「今日も忙しいね。私達は」
そう言ったのはサヤだった。
「一緒に頑張ろう。終わったらマッサージしあいっこしようよ。久しぶりに」
とサキカ。
あほかよ。間抜けかよ。ゴミ共が。あの狭い密室に客1人に奴隷1台で過ごすってのに一緒に頑張るも何もない。未来のない奴隷が精神的なつながりを求めてどうするんだよ。だったら客に魅力的だと思われる方法を奴隷の小さな脳みそなりにも考えろよ。
そもそも私は奴隷として生まれたのではなく人間として生を受けていたのだから、サヤ達より優遇されて当然であり、同じ境遇のサキカよりも私が優れていたということなのだ。
私が髪を指で梳かして預言者との約束を思い返していると、いつのまにかトルパが目と鼻の先にいた。
「なに? もう迎え来るんじゃないの? 身だしなみ整え終わった?」
整えてもその一重まぶたは変えられないし火傷のあとも消せないけどね。
トルパはまるで戸をノックするかのように、私の額を優しい力で叩いた。
「駄目だよ」
嫉妬していると、羨ましいと素直に言えばいいのに。
「何がだろう?」
私はわざとらしく高い声でとぼけて見せた。すぐ近くからエンドのため息が聞こえて来た。




