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君は奴隷でぼろぼろで  作者: なみだぼたる
第2幕 奴隷は嘘つき偽善者で
139/145

16-5,奴隷と子どもはぐっすり眠る

 あと三口程で飲み終わる紅茶に角砂糖を2つと多めのミルクを入れた。狼はずっとストレートのまま大きな口に少量ずつ垂らしている。


 ショートブレッドとマドレーヌ風味のママレードが乗っかっていた皿を片付けに来た水色のウサギがこう言った。


「咎人処刑に興味はございませんか? 新鮮さには欠けた瑞々しさの乏しい罪人ですが熟れる前の酸味をお気に召されるかもしれません」


 私達はどちらも頷いていないし口を閉ざしたままだというのにウサギは牢の鍵を開けていく。大きく頑丈そうな鍵で、がちゃん。装飾の多い鍵で、がちゃん。今にも壊れてしまいそうなガラス製の鍵で、がちゃん。私と狼はウサギに誘導されるまま暗い廊下を歩いた。すれ違う看守達は皆立ち止まり頭を深々と下げる。ドット模様の爪を持ったお洒落なゾウは「失礼いたします」と私の髪をポケットに入っていた櫛で梳かした。


「無関係の私達が居てもいいの? 処刑なんて」


「いいも何も、救世主様をこの牢獄へ招待したのはその咎人ですから」


 獅子につばの広い帽子と羽根のついた濃いピンク色の扇を手渡され、私達は処刑場へやってきた。狭いステージを縦10列ほどの観客席がぐるりと囲っている。客席は一つ残らず動物によって埋められている。私達はステージの真ん中で両腕を背中で縛られ跪く首輪をした少女の目の前に、まるで彼女を見下すように立った。客席からは割れんばかりの歓声。飛び散る唾液が目で見えそうだった。


 少女はガタガタと震え大粒の涙で石の床を濡らしている。


「おい、処刑人。さっさと始めろ。興がさめるぞ」


 そう言ったのは私の隣に立つ狼だった。今このステージに立っているのは狼と罪人と私だけであることに気が付いた時、私は初めて自身が処刑人であることをしった。


「答えなさい。お前はどんな罪を犯したのだ」


 権力を持った私の声は鋭く、そして高い。客席からは狂喜の叫びと陽気な口笛と私をさらに高揚させる拍手が湧き起る。


 少女は叫びに近い声で答えた。


「私の罪は令嬢の代わりとしての役目を遂行出来なかったこと。女としての魅力が不足していたこと。そして最愛の兄すら守ることが出来なかったこと」


 私の頭にはもう場を盛り上げることにしか意識がなかった。「なんて重罪だ。処刑されても仕方がない」と言いながら私は彼女の痩せ細った背中を踏んだ。観客達は私の望む反応をしてくれる。気持ちが良い。気持ちが良い。


 私は脚を床に戻すと彼女に顔を近づけるように腰を低くし力づくで彼女を頬を掴んだ。


「言いなさい。罪を犯した場所はどこだ」


「キンファ家の大広間です」





 これより先、投稿が不定期になることが予想されます。自分は呼吸する生ごみを自称するような親のすねかじりの憂鬱人間なのですが社会復帰に向けて3歩進んで4歩下がる段階にまでやっとの思いで到達出来ました。自分の中では大した成長なんです。自分を卑下しないでいられるような日を夢見て死なない程度に頑張ります。

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