表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は奴隷でぼろぼろで  作者: なみだぼたる
第2幕 奴隷は嘘つき偽善者で
108/145

12-8,奴隷に甘美は似合わない

 闇を抱えた物憂げな男が悪戯っぽく笑う様はなんとも妖艶で美しい。私は不覚にもぼんやりしてしまった。あの性商売小屋から離れ過度な肉体労働から離れたために心が油断しきっているのだろうか。あってはならないことだ。


 チャックはアルマを探していて話しがあるという。それはつまり、私の体に憑りつきたいということだろうか。おそらく男の子であろう彼に体を自由にされることは不快でたまらない。しかし、私が純粋な世間を知らない少女を偽るのならば、私は先にこれを言わなくてはならない。眉と目尻を下げて。


「死んでしまったのですか? あなたはまだ幼いように感じます。それなのに、なんて悲しい」


 彼は靴を脱ぎ、完全に私の隣でくつろいだ。足をパタパタと揺らしている。


「うん。9歳なんだ。って言っても2年前に死んじゃったからずっと9歳のままなんだけどね。酷いよね酷いよね。無害な子どもである僕まで殺すなんてさ」


 私は自らの心臓をぎゅっと抱きしめ憐れむ表情で彼を見つめてあげた。


「殺されてしまったのですか。なんて気の毒な話しでしょう。なんて恐ろしい」


「ほんとほんと。すっごく怖かったよ」


 そう話している彼は微塵も恐いなんて思っていないかのように明るく楽しそうにしている。場の空気を悪くしないように気を遣ってくれているのだろうか。


 不思議だった。奴隷という立場を忘れることは愚かであるというのに、彼とは非常に話しやすかった。それが年齢に理由があるのか器に理由があるのか生命的な価値に理由があるのかはわからない。


「それでね、僕、そのアルマってお兄さんとお話ししに来たんだけどね、折角だからお姉さんともお話ししたいなって。ほら、僕男の子だから」


「嬉しいですけれど、私はあまり話し上手ではないですよ。面白いお話しも出来ませんわ」


「えー。僕お姉さんのお話しもっと聞きたいのに。じゃあ、僕がお話しするよ。僕ね、いわゆる記憶喪失ってやつなんだ」


 青年の格好をしたキザで悪戯っぽい人格がそれを言うとどうにも胡散臭い。嘘を話されているような気がする。


「記憶喪失、ですか? けれどチャック様は自らが、その、殺されたということも年齢も覚えているではありませんか」


 年上の低姿勢な女に甘えたいのだろうか。彼は距離をつめ、私にほんのちょっともたれかかってきた。男性の割に長い髪が私の額をなぞる。


「幽霊になってから記憶がなくなっちゃったんじゃないんだよ。記憶喪失になって3日くらいで死んじゃったんだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ