12-7,奴隷に甘美は似合わない、と謝罪
気が付かないはずはない。本来のアルマの視線はいつだってぼんやりしている。鋭さも温かみもなく、陽が全く射しこまないが雨も降らない曇天のような瞳でこちらを見るのだ。
しかし、今寝ぼけた私の目の前にいるのは活発に瞳を揺らし深くアーチをを描いて笑う目を持ったアルマだった。
これは、夢魔だ。なんて可哀想な夢魔だろう、死骸にとりついてしまうなんて。なんて間抜けなゾンビだろう、すました顔で全ての主導権を握っていながらこの様だ。
私はかすれた小さな声でか弱く叫ぶと毛布に包まった。毛布をすこし持ち上げては彼の顔を見てまた隠れてみる。
「あなた様はアルマ様に取りついた夢魔様ですね」
毛布に顔を隠したまま放つ言葉に力はあまり伴わない。私は彼に聞こえないように咳ばらいを二度すると、出来る限りの綺麗で高い声を意識してそう聞いた。
「僕って夢魔って呼ばれてるんだね、それは今初めて知ったよ。でも、正解。僕はこの体を借りている別人だよ」
声はアルマそのものに思えたが喋り方が幼い少年のようだ。しかし純粋無垢なあのジグの子どもを思わせるような雰囲気はない。もっと悪戯っぽいような、大人びたことを隠す子どものような。
彼はベッドの上に膝を乗せて上がってくると、私を包む毛布に手を突っ込んだ。そして私の腕を引っ張りだすと私の手の甲に口づけを落とした。
私は演技ではなく本気で鎧のようにかぶっていた毛布を背中からずり落としてしまった。
「えっと、これは?」
私が聞くと彼は笑顔で答えた。
「挨拶だよ、ただの挨拶。夜遅くにごめんね。本当はお姉さんの体を借りてこの体のお兄さんと話がしたかったんだけど、その前にお姉さんに挨拶をしたくてね。僕はチャック。夢魔なんて悪魔じゃないよ。僕は人を怖がらせたりなんかしないもの」
「じゃあ、夢魔じゃないのならあなたは誰なのでしょうか?」
「僕はただのお化けさ。幽霊だよ」
「それでその、チャック様」
「チャックでいいよ」
「いいえ、呼び捨てが出来る身分ではないのです。お許しくださいませ」
チャックは唇をとんがらせて不満を表現したが私がどうしたらいいかわからないとでもいうように困った顔をすると「いいよ」と返してくれた。
「お姉さんの好きなように呼んでいいよ。僕はわがままな子じゃないからね。それでお姉さんは何を言いかけたの? ごめんね、話を切っちゃって」
「チャック様はアルマ様をご存知なのですか? アルマ様とお話しがしたいと先程おっしゃっておりましたし、アルマ様もあなた様に関して心当たりがあると」
彼は大きくうなづいた。
「うん。僕はここ数日顔も声も名前もわからない彼をずっと探していたんだ」
そう言って彼は自らの、アルマの胸に手を置いた。
いつも読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
そして謝らなくてはいけないことがございます。この作品「君は奴隷でぼろぼろで」が小説家になろうサイト様の規約に違反していました。年齢制限をつけずに全年齢対象にして公開をしていたところ、運営さまから違反しているとメッセージが来ました。
正直な所をもうしますと、全年齢対象のものを書いているつもりでした。「性的な描写はありはするが規制にひっかかるほどのものではない。けれどそう言う文章が少しでもあると強い嫌悪感を抱く方も存在する」という認識で全年齢対象にしたうえで、性的描写(いわゆる下ネタ?)がある場所にはタイトルに注意書きを入れました。
完全に私の認識が甘かったです。投稿サイトというのをあまり知らないということもあり運営さまの手を煩わせてしまったし読み手の方に不快な思いもさせてしまったと思います。すみませんでした。
性的描写のある箇所は削除いたしました。小説内容的には全年齢対象になったと思うのですが、もしもご意見がございましたら、微塵の遠慮もせずにおっしゃってくださるとうれしいです。