1-1,歔欷の預言者との約束
※カクヨムさんとの二重投稿です
奴隷として生を受けたという者は少なくはない。奴隷の血が混ざっている時点で隷属する運命を約束されている子は私のとなりにもそのとなりにもたくさんいる。彼女達はどう育てればどのように売れるかが計算された最低限の管理のみで幼少期を過ごしてきたため、笑っていても虚ろな目をしているうえに命を燃やすことを恐れているかのように感情の起伏に乏しい。
そんななぜ生まれてきてしまったのかはわからず、今日を生きる理由はパンを貰うためという不憫な仲間達が多い中、私は愛し合う夫婦の間に生まれ、溢れんばかりの愛を注がれて育ち、ホットミルクを飲んでベッドで眠る生活をつい数年前までしていた。誕生日のプレゼントにはラベンダーの色がきらきらと光るネックレスを父様から貰っていた。当然、それは奴隷となったあの日に安物ではあるがふさわしいとは到底言えないととりあげられ、捨てられてしまったのかどうかさえわからないが。それが私の元へと帰ってくる可能性は0であることは確かだ。。
生まれた時から商品である彼ら彼女らより、私ははるかに幸せ者であることは間違いない。睡眠を取れば皮のすぐそばにある骨が床にあたって痛くとも、白髪交じりになってしまったボサボサの髪でも、明日パンや水が与えられる保証がなくとも、それでも私は抱きしめられる温もりも満腹になったあとの眠気も知っていて、まるで人間のように笑顔を作ることが出来るしどう涙を見せれば人間味がある奴隷になれるかも知っている。
けれど、けれど。私も奴隷であることには変わりはないのだから、明日を生きれる保証はなく、私が死んでも誰の責任にも罪にもならない。仲間達もわずかに心を揺らすだけで、錆びた体に鞭を打って普段と同じ生活を送りながら「明日は我が身」と思うのだろう。
私が全てを捨てたのは9歳の時。名前も捨てた。家族も捨てた。人間も捨てた。長い三つ編みに憧れ丁寧にのばしていた髪も捨てた。今の私は数字で呼び出され、カラと名乗る少女であり13歳と紹介される時もあれば14歳と紹介される時もある。首輪からは重たい鎖を毎日垂らしている。