入学式
「いいかい、アンリ。学校で何かあったら直ぐに言うんだよ?」
「大丈夫ですよっ先生!だってボクは、先生の弟子なんですから!」
「魔法は実技以外では使うんじゃないぞ?緊急時には最低限の魔法で逃げることを優先するんだぞ?」
「分かってますよ!魔法は無闇に使わないですから」
「暴漢に襲われたらそいつは倒してしまっても良いからな」
「ボクは男だよ!」
ぷぅーと頬を膨らませて拗ねるその姿も、少女のような仕草で可愛らしい。
「あ、あとアンリ」
「なんですか?先生」
「今日のご飯は何が食べたい?入学祝いだ」
「えっ!じゃあシチューとケーキが食べたいです!」
「わかった。楽しみにしておけよ?」
「はい!では、行ってきます!」
深緑のブレザーと白いパンツの制服を綺麗に着て、アンリは駆けていった。
久しぶりに一人になるこの部屋は、間取りで言えば1LDKのまるで昔の世界でも見たことあるような空間だ。
二人でいても不便を感じなかったが、一人になるとなんとなく、広くなった気がする。
一年。
血のように濁ったアンリの瞳が、この短い間で光を取り戻して、本当に良かったと思う。
彼が村で本来得るはずだった友達も、親愛も全て壊れてしまったが、せめてこの街で、新しくそれを手に入れることが出来ればきっと、俯くことなく生きていけるだろう。
そのことを願ってやまないほどに、今の俺は、アンリを溺愛している。
しかし、一つ明記しておこう。俺はロリコンではない。そして男色でもない。アンリが可愛すぎるだけなのだ。
さて、愛弟子を見送ったあとにやる事は一つ。
「夕飯のために労働するかね…」
改めて言うほどでもないが、我が家にはお金が無い。