その子、奴隷にて
山賊達を縄で拘束した後、俺は住処に一つあった倉庫へ向かった。
窓の無いその家屋は、出入り口に錠がかかっていたが、磁力を操り開ける。
家屋の中は、異臭で満ちていた。
予想通りと思いたくは無かったが、子供を閉じ込める施設としての最低限のモノも用意されていなかった。
木の床は汚物にまみれ、至る所に血痕が残っている。暴行が行われた形跡も見えることから、奴らは子供を相手に好き勝手していたのだろう。
「ぁ…」
糞みたいな大人に対して怒りを感じていたとき、部屋の奥から小さな声が聞こえた。
「お迎え…?」
か細い声の主は、暗い倉庫の隅で怯える様に座っていた。衣服は辛うじて身体を覆う程度であり、青色の髪は整えられること無く伸びきっている。わずかに覗かせる紅色の目は、まるで血の塊のように見えるほど大きく、淀んでいた。
「あぁ、お迎えだ」
「ボク、何にも出来ないよ?」
突然、その子は怯えながら言葉を紡ぐ
「皆、力持ちだったり、お料理が出来たりしたから、街のおじさん達のところで働いているのに、ボクだけずっと、ここにいたの。何にも出来ないから。おじさん達にいつも怒られて、痛くて、泣いちゃうともっと怒るんだけど、止められなくて…」
そう言って、紅い瞳から涙が漏れる。
そう、村長たちの言葉には腑に落ちない点がいくつもあった。
子供が誘拐されているのに村には子供の働く姿があり、大人達は事態に焦るそぶりも無い。極めつけには即時行動に移ろうとすれば難色を示す。おおよそ、村の窮地に対する行動とは思えなかったのだ。
そして、山賊の住処は適当に拵えた木の家。それらをまとめて判断すれば
村の子供を奴隷として売り飛ばした
と考えられる。
手を尽くしたように見せかけるためギルドに依頼を出し、村で秘密裏に殺したり、情報を漏らして山賊側が討ち取ったりしたのだろう。となれば、山賊は村の人間、それも村長に近い奴らである可能性も高い。
恐らく、ギルドが本腰を入れれば村に合流して山賊は行方をくらませた事にするつもりだったのだろう。
なんとも、醜い話だ。
俺は膝をつき、ボロボロの子供を抱き締める。きっと、この子は親に金目当てで捨てられたことも、他の子たちがどんな目に遭っているかも知らないのだろう。
「大丈夫だ。これからは、普通に暮らしていける場所に案内するよ」
「ボク、頑張るから…頑張るから、痛いのは、いやだよぅ…」
紅い瞳から流れる涙は、しばらく止まることがなかった。俺は、この子が受けた苦痛を少しでも受け止められるよう。泣き止むまで抱き締め続けた。