とある村での山賊退治2
山賊の住処は、思いの外分かりやすい場所にあった。
と言うのも、村の人間がかつて使っていたであろう山道から見える位置にあったからだ。隆々とした地形の中に、わずかにある平らな土地。そこの木々を切り倒して拠点を作っている。
音を殺して周囲を探索したが、おおよそ〝襲撃〟に対する備えは見当たらなかった。
「まぁ、そうだろうな」
誰も居ないのにそんなことをぼやき、前の世界からの癖というモノは早々に無くならないのだなぁとしみじみ思う。村の様子と、拠点の構え。これら二つの不自然は、一つの答えを出すととても歪な自然へと変わる。
「となると、一刻を争うか」
事態の深刻さを把握できた。あとは…
暴れるだけだ。
「さぁて、やるか」
右手の平を天に向け、空気を圧縮して空に放つ。
パァン
乾いた音が山に響き、鳥たちは一斉に飛び立つ。その刹那、木々の隙間を縫い住処へと侵入する。
家屋は七つ。倉庫が一つ。乱雑に建てられたそれの中でリーダーの住居は…!
「倉庫の隣!そうだろう?小心者!」
目星を付けた家屋の前で叫ぶ。他の家屋からも賊らしき人間が音を聞きつけ外に出てきはじめた。
わずかな静寂、その後に家屋の扉が静かに開き、腕の太さと同じくらいの棍棒を片手に、筋肉の塊のような男が出てきた。
「小心者たぁ、誰のことだ?」
「呼ばれて出てきたんだから、自覚はあるんじゃないのか?」
「ふん」
「倉庫に蓄えたモンが気になって仕方ないんだろう?分かりやすくて笑っちゃうね」
「それならば火でも放てば良いものを、わざわざ近づいてくるとは。貴様はバカだな」
勝ち誇った顔をして、男は号令を挙げる。
「てめぇらぁ!こいつをぶっ殺せぇ!」
賊達の怒号が響く。
俺は手下の殺意に目もくれず、常人には捉えられない早さで男の目の前に移動し、奴がそれを知覚する前に背負い投げをぶち込んだ。
手下どもは消えた俺の行方に疑問符を持ちながらも、音の方向へ顔を向けると、信じられないことが起きたと言わんばかりの顔で慌てふためく。
「裁きを受ける前に教えてやる。俺が火を使わなかったのは、人質の数がわからなかったからだ。お前らなんて眼中にないんだよ」
受身も取れず身体を強打した男は、口をパクパクさせている。打ち所が悪かったようで、呼吸が上手くいかないようだ。
「聞け!賊徒ども!これよりお前らを拘束し、王都の審判機構へと連行する。抵抗は無意味だ!」
一喝。その言葉に恐怖を覚えた一人が山の中へ逃げようと走り出す。が、すぐに地面に足を取られ転んだ。
「言ったはずだ、抵抗は無意味だと」
既に地面には魔法式を仕込んでいて、俺以外の動く者に対し、草花が纏わり付くようにしている。
「魔術師をなめるなよ」
こうして山賊達は降伏した。