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魔術

魔術、魔法。

ファンタジーの世界においてこれほどの”不思議”はない。

この世界における魔法は、火、水、風、土、光、闇の6属性に分類される。

それは、現在もなお解明されていない魔法のシステムを理解するために定義されたものでしかない。相反する属性を含め、それら主属性の割合によって、色のように数千種類の魔法が生まれる。

一見、それらの割合さえわかれば魔法というものをすべて理解できるのではないか。と考えるかもしれない。しかし魔法がこの世界でも”不思議”として解明されていないのは使用者の適正というものが存在するからである。


魔法使い、魔術師は生まれたその時から得意、不得意の魔法が存在するのだ。

才能と端的に言うと説明がしやすく、それぞれの属性の魔法の習得の速さ、強さが異なり、火と水などの相反属性がどちらも得意なこともあれば、その逆もある。また、最初期の魔法の習得が早くても、徐々に複雑化していく中位・高位魔法には不得手となり、下位魔法の方が高い威力を出せてしまうこともある。

そのため魔法を使うものは、その生涯をかけて自分が得意とする魔法を探し続けることが普通だ。

10年かけて磨き上げた魔術で大成する者もいれば、30年かけても芽が出ず諦めた先の属性魔法で才能を開花させることもある。なんとも遣る瀬無いが、どの界隈においても同じようなことなのかもしれない。ゆえに魔法使い同士の戦いになった場合、相手の見た目や年齢を重視するものは少ない。たったの1年で、さらに言えば僅か数時間でどんな生物よりも魔法を習得してしまう天才も世の中に存在している可能性もある。


このように、出力を担う生物の才能に大きく左右される魔法は、客観的に見てもその魔法の威力や生物の才能を数値化させることができず、魔法の再現性が限りなく低いことから、大まかな分類を行いそれらを周知させることで徐々に研究を深めていこうという状況だ。


しかし、メイガスだけは例外だ。

彼が転生前に要求したことは、魔法に関する適性と基礎魔力の最大化だった。

言ってしまえばどの魔法をどのような割合で使っても最高の品質で放つことができるのだ。しかも、本人はそのことを理解しているため、彼だけがこの世界における魔法の基準を作ることができた。

少々卑怯にも聞こえるが、才能があることが確定していれば鍛錬のモチベーションも高く、彼が修行を終え社会に出始めた時には全ての魔法に対する理解と習得ができていた。


ハッキリ言ってチートである。努力したチート。


アンリは、メイガスが溺愛しすぎたため、魔法を教える際にその適正をメイガスが調べ上げ、手始めにということで最も得意とされる魔法のみを習得していた。魔法の教育方針としては異例中の異例。まずは様々な基礎魔術を習得させ、どの魔術もある程度は使えるようになると才能に合う魔法を探して学んでいく通常の教育とは全く異なるが、人里で学んでこなかったメイガスはそのことに気づきもしなかった。いや、少し冷静に考えればわかっていたことだろうが、アンリへの愛が盲目にさせたともいえる。


シモンが報告を受けた時、心底驚いたのはそういった背景があったからだ。

数万人に一人くらいは、そんな人間も出てくるかもしれない。しかし、魔法学校にこれから通い始める子供がそんな特異な存在であることに興味を持った。一体だれがその子を育てたのだろうか。偶然なのか、それとも…。

シモンはメイガスと話し、その疑問に対して確証に近い何かを得た。彼の細目がより一層細く、そして張り付いたような笑顔がより不気味な空気を醸し出していた。

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