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四節 あなたと共にいるために ① [イザーナ]

 ――魔王領の氷が融けた。

 その知らせが長城より王都にもたらされたのは、勇者が誕生してから一年と数ヶ月経ったときのことだった。


 変化は、一晩で訪れたという。

 魔王領が夜の闇に沈み、再び朝を迎えたとき。

 長城から見える光景は一変していた。


 嵐は止み、氷や雪は幻の如く融けて消え、冷気も失せた。

 それら魔王領を覆っていたものが取り除かれたあと、露わになったのは生命あふれる緑――などではない。

 長城より見える範囲に、生命の気配など微塵も存在しなかった。

 彼方まで続くのは草木の一本も生えていない死の荒野。

 彼方にそびえるのは切り立った岩山。

 魔王領は、たった一晩のうちに白の風景から黄土色のそれへと変化していた。

 自然現象ではあり得ない変転。

 

 対応は迅速だった。

 長城の責任者は、まず家畜や荷馬などを魔王領へ向かって放ち、時間が経過してもそれらが生存していることをたしかめると、次に平民より徴兵された万を越える兵士のうちから志願を募り、偵察隊として送り込んだ。

 結果から言えば、彼らが命を落とすことはなかった。

 魔王領の凍結封鎖は、完全に解除されていたのだ。


 その情報は、第一報より遅れて半日後に王都へ伝えられる。

 それを受けて、王政府及び聖代神殿は以下のような判断を下した。

 すなわち――『これを魔王覚醒の証と見なす』。


 王政府は事前に決められていたとおり即座に勇者の派遣、及び、最低限の治安維持用の兵力を残した国の全戦力を投入することを決断。

 これを国中に布告する。

 知らせがもたらされた翌日には、民を安堵させる目的もあって盛大な出征式を執り行い、勇者に率いられた多くの騎士や兵士が王都を発っていった。


 戦が、始まろうとしていた。






          **********






 王都を出立する前夜のことである。

 陽が落ちてなお、翌日の準備のために慌ただしく人々が動き回る都。

 その一画に、比較的平時に近い落ち着きを保ったままの場所があった。


 王城には劣るものの、それ以外の王都に存在するどの家屋よりも巨大な石造りの建造物。

 上空から見下ろせば、ふたつの長方形が交差した構造――ちょうど十字の形をしているのがわかるだろう。

 十字の中心、交差点には一際大きな塔がそびえたっており、その前後左右には中心塔を取り囲むようにいくつもの尖塔が立ち並んでいる。

 その塔を含めた建物の全ての壁面には、隙間なくびっしりと精緻な文様が彫り込まれており、一部分を切り取っただけでも芸術品の如き様相を見せていた。

 まるで建物それ自体がひとつの作品であるかのようだ。

 間近で見上げれば、空のほとんどを覆い隠してしまうほどの規模を有するそれは、厳かでありながら、どこか神聖な気配もまとっており、見る者をいつでも圧倒する。


 聖代神殿。

 

 それがこの場所に付けられた名だった。

 世界における信仰の中心地であり、天に最も近いと言われる場所。 

 事実、中心部の塔は、国の権力の頂点である王城よりも高く造られていた。

 それが許されるだけの権威を持っているのが、この神殿を有する組織だった。

 

 明日に出征を控えた私達は、現在、その神殿の主に呼ばれこの場所にやってきていた。

 招かれたのは私とアベルだけだったが、もちろん私達だけで行動できるわけもなく、勇者の護衛であるフレイシア様とベイル様も一緒だった。

 そのふたりに先導される形で私達は敷地内を進んでいく。

 ちらり、と隣に目を向ける。

 村を出てから一年以上経つが、相変わらずアベルの頭は私よりもずっと高い位置にあり、今でも見上げる必要があった。

 むしろ、以前よりその差は大きくなったかもしれない。まだ成人前だというのに、アベルは大人の間に混じっても違和感がないぐらいには成長していたからだ。

 対して、私はまだまだ幼さが抜け切っておらず、子供扱いされることのほうが断然多い。

 不公平だ、と思う。

 

 そんな益体もないことを考えているうちに、私達は神殿の入り口前に辿り着いていた。

 守護騎士のふたりに促されて私達が前に出ると、守衛に立つふたりの神殿騎士――王政府より派遣された任期付きの騎士――の一方が誰何の声を上げる。


「職務ゆえ、失礼いたします。お名前とご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか」

「勇者アベルと宮廷魔術師補佐イザーナ。そして私の守護騎士ふたり。聖代神殿長のお招きにより参上致しました」


 アベルの答えを聞いた騎士は、篝火に照らされた私達の顔を確認すると、恭しい態度で頷いた。

 

「たしかに。お話は伺っております。どうぞ中へ」


 騎士のそれぞれが両側から扉を開く。

 軽く礼を言って、私達は中に足を踏み入れた。


「…………」

 

 薄暗い通路の真ん中を、無言で歩いていく。

 会話はなかった。普段であれば、私達だけのときは守護騎士のふたりも軽口を叩いたりするのだが、長城より魔王覚醒の知らせが入ってからは、彼らの口数は極端に減っていた。

 やはり明日のことが気にかかっているのだろう。或いは、かつての戦い――私達の村で起きた出来事を思い出しているのかもしれない。

 

 それは私だって同じだった。決して消えることのない不安が、この胸の中には渦巻いている。

 どれだけ成長しようと、私は所詮、戦士ではなく小娘である。恐れを完全に失くすことなどできようはずもなかった。

 しかしこのときに限って言えば、私の心の多くを占めるのは明日のことよりも目先のこと――これから会う人物に対しての否定的な思いだった。

 

 ありていに言って、私は招待主が好きではなかった。

 嫌悪していると言ってもいい。

 だから神殿の最奥――礼拝堂に向かう足取りも、気も、非常に重かったのだ。

 しかし、私の気持ちとは無関係に、やがてそこへ辿り着いてしまう。


「お付の騎士は、ここより先はご遠慮願います」


 入り口の扉の前には、やはり神殿騎士がふたり。 

 彼らから掛けられた言葉に、フレイシア様達は無言で頷くと、通路の端に寄った。

 それを確認してから、神殿騎士は扉を開いた。

 

 そうして、私達は、この国の信仰の頂点――聖代神殿長の待つ場所へ踏み込んだのだ。 



 



 礼拝堂の最奥に、その人物は立っていた。

 こちらに背を向けて祭壇上に佇む彼の人は、高い背の後ろで手を組んで、頭上を見上げている。

 視線の先にあるのは、天井に近い壁面に設けられた、おそらく初代神殿長が勇者に聖剣を授ける場面を描いたのだろう色硝子。

 外から差し込む月明かりに透かされて、様々な色が散りばめられた模様硝子は、うっすらと輝きを放っている。

 ひどく幻想的な光景。


「神殿長。勇者アベルに宮廷魔術師補佐イザーナ、参りました」


 祭壇の下からアベルが声を掛けると、それに反応して、彼の人物――神殿長はゆっくりともったいぶったような動きで振り向いた。

 まず視界に入るのは、闇夜でも奇妙なほどに目立つ白。

 その身を包む白法衣と、腰まで伸びた白髪。

 老人のそれとは根本的に異なる、あらゆる汚れを拒否する完全なる純白だった。

 その次に意識が向くのは、彼の人の双眸。

 銀眼。

 神聖な輝きというよりも鉱物、無機物を連想させる、人間らしさというものがまったく見て取れない瞳。

 

 顔立ちは、整っている。

 男にも女にも見える中性的な――というより性別というものを感じさせない、年齢さえも不詳な、やはり非人間的な容貌。

 

「やあやあ、よく来たね、ふたりとも」


 その声からも、性別年齢を推し量ることはできなかった。

 神殿長の顔が、笑みのようなものを形作っている。

 しかし表面上はにこやかであっても、やはり私にはそこに人間的な要素を見出すことができなかった。

 まるでよく出来た作り物のようである。


「わざわざこんな夜更けに呼び出して、すまなかったね。君達が出発する前に、どうしても最後に余人を交えず話しておきたかったんだ」 

「いえ。私も最後にご挨拶するつもりでしたから」

「君は、相変わらず律儀だねえ」


 アベルの言葉に、神殿長は呆れたように笑う。


「そう、でしょうか? 私としては、いつも当たり前のことをしているだけなのですが」

「当たり前、ね」


 不思議そうな顔をするアベルを、神殿長は含みのある表情で見下ろす。


「それは、体力をつけるためという理由で意識を失うまで走り続けることも指しているのかな? 未来を考えずに《神秘》を使い続ける行為は? 或いは、血潮を流しながらも剣を振るい続けることは?」


 ――来た、と私は思う。


「一体、それは誰にとっての当たり前なんだい?」


 仮面のように張り付いた、一見すると人当たりのよさそうな笑みの裏から、隠しきれない感情がにじみ出てくる。

 泥のように粘ついた、ドス黒い想念。


「残念ながらね、アベルくん。それは万人にとっての当然ではないのだよ」


 神殿長の口元が、歪む。

 浮かべられた笑みが、より深いものへ。

 唇が不気味に吊り上がり、弧線を描く。

 それはまるで人としての仮面に入った亀裂のよう。


「本当に、君は民の望む勇者という偶像を、そのまま形にしたような人間だねえ」


 その声、表情、雰囲気から、はっきりと感じ取ることができるもの。

 目前の存在の全てから漏れ出してくるそれ・・の名を、私達はこう呼んでいる。


「――実に、虫唾が走るよ」


 悪意、と。


 背筋が震える。

 自分に直接向けられたわけではないというのに、怖気が走り、身体の震えが止まらない。

 それはひとりの人間が持つには、あまりにも重く、深く、濃すぎた。

 まるでこの国中の悪意を煮詰めて凝縮したような想念。


 善悪好悪を別として、悪意や敵意というものは本来人間的な感情であるはずなのに、やはり私はこの人が自分と同じ人間であると思うことができない。

 先ほどまでの無機物のように作り物めいていた様も。

 今の人より逸脱した悪意を見せる様も。

 どちらの面からも、人間らしさというものを、私は感じ取ることができなかった。

 

「どうして君は、君達は、そうまでして人々を救おうとするんだい? どうしてこの不出来で醜悪な世界を救いたいと望むんだい? なんのために? 誰のために?」


 声は、不気味なほどに穏やかだった。

 乱れなく、淀むことなく、すらすらとその口から言葉が流れ出てくる。

 表情にも、変わらず亀裂のような笑みが浮かんでいる。


 神殿長は、アベルに語りかけながら、歩きだした。

 ゆっくりと祭壇を下りて近づいてくる。


「勇者だから? 聖剣を手にしてしまったから? 正義感? 使命感? 本当にそうなのだろうか。果たして人は、そんなものだけで極まった艱難辛苦を乗り越えられるのだろうか?」


 アベルの前に立った神殿長は、その長身ゆえに彼を見下ろす形となる。

 微笑みながら、温度のない冷たい目つきで彼を見る。

 

「アベルくん。私はね、働きには、必ずそれに相応しい対価が必要だと思うのだよ。対価、報い――つまり、ご褒美だね。それがあるからこそ、人は労苦に身を浸すことができる。逆に言うと、対価がなければ、基本的に人は務めを果たそうとはしない、ということだね」

「…………」

「なのに、君はなにも求めようとしない。君は勇者だ。この世界で最大の義務を果たす者だ。ならば君には、それに相応しい対価があって然るべきだと私は考えるのだよ」


 神殿長は、そう言うと上半身を横に傾けて、下から覗き込むようにアベルを見やる。

 地面に向かって垂れる白髪の隙間から、銀眼がなにかを見定めるようにじっと彼の顔を見上げている。


「アベルくん。これは君の権利であるがね、同時に義務でもあるのだよ? たしかに無欲の聖者というのは外聞がよいだろう。愚衆はそういった美談を好むだろう。しかし民を動かす立場にある我々にしてみれば、その無欲さは不気味であり、不安でもあるのだ。対価を受け取らないのは、もしや本当はその義務を果たすつもりがないのでは、とね」

「あなた方には、生まれ故郷の村を立て直す援助を――」

「そんなもの、対価でもなんでもないさ。為政者が民を支援することなど当然のことだろう? まあ、通常ではあり得ない厚遇、特例ではあるけれども、対価と言えるほどのことでもない」


 アベルの返答は、ばっさりと切り捨てられてしまう。

 彼は、困ったように笑う。

 どう答えたらよいものか、というように頬を指で掻く。

 それを見た神殿長は、身体を起こすと、再び歩きだした。


「我々は、よりたしかな安心を求めているのだよ」


 私達の周囲を、円を描くようにゆっくりと歩いていく。


「だから、君にはもっと義務に相応しい要求をしてほしいのさ。もうすぐ戦が始まるが、過去の記録から考えれば、魔王との決着は一月や二月でつくようなものではないからね。求めを叶えるだけの余裕は、これからいくらでもある」

「ええと、そう言われてましても、ですね」

「前回の顔合わせのときは、きっぱりと断られてしまったけれど、あれから一年以上経つ。君の周囲の環境も、君自身の肉体も大きく変わっただろう? どうだい、そろそろ欲というものが出てきたのではないかな? 例えばそう――」


 神殿長の足が、アベルの背後で止まる。

 腰を折ると、彼の耳元に顔を近づけて、


「女、とかね」


 そう言った。


「……!」


 反射的に、横合いから口を挟みそうになるのを、寸前で堪えた。

 たとえどれだけ私が嫌悪していようが、この人物は人々の信仰の頂点なのだ。

 無礼な行為が許されるはずもなかった。

 

「勇者たる君であれば、どんな女だって選り取りみどりだよ? それこそ王女殿下だってね。君も知ってのとおり、あれは勇者への供物でもある。本人もそれを受け入れている。たとえどんな扱いをしようと、殺しさえしなければなにも問題はないよ?」


 横目でアベルの様子を窺う。

 彼は、なおも困ったような笑みを浮かべていた。

 神殿長は、そんな彼の首に後ろから腕を回すと、白く細い指で頬をそっと撫でる。


「それとも、私がお相手しようか?」


 悪意に満ちた流し目が、笑みに細まる。

 不気味な微笑が、あでやかなそれへと変わる。

 しかしそれにも、アベルが動じた様子はなかった。


「……相変わらずみたいだね、アベルくんは」


 そんな彼の様子を見た神殿長の顔から、笑みが消える。

 つまらなさそうに一瞥してから、抱きつく形になっていた身体を離した。 


「では金は? 美食は? 芸術品は?」


 アベルの横を通り過ぎて彼の前に出ながら、神殿長は言葉を続けた。


「書物は? 奏楽は? それ以外のあらゆる娯楽は?」


 こちらを振り向かないまま足を進め、神殿長は再び祭壇を上っていく。

 やがて私達を出迎えたときと同じ位置まで戻ると、そこでようやく足を止めた。

 一拍置いて、振り返る。


「けれど。……君は、どれも望みはしないのだろうね」


 その顔に浮かぶものを見て、私は目を見開く。

 それは私が初めて目にする、神殿長の人間らしい表情だった。

 悪意――というよりは憎しみ、怒りの類。


「…………」


 アベルが、無言で視線を伏せるのが見えた。


「君達は、いつもそうだ。そうやって、我々を理解しようとしない。勇者は、人の心を切り捨てる・・・・・・・・・

「…………」

「君は考えたことがあるかい? 我々が、勇者という存在をいかなる思いで見ているのか。いずれ、どのような思いを抱くようになるのか」

 

 アベルは、答えない。

 眉を顰めて、俯いている。 


「君の至上である彼女にも、訊いてみようか? そのために彼女もここへ呼んだのだからね。勇者などというモノが、どれだけ救いようがないのか、それを知ってなお君を今までと同じように――」

「神殿長!」


 アベルの鋭い声が響き渡った。

 顔を上げた彼は、射竦めるような眼差しを祭壇の上に立つ神殿長へ向けていた。

 厳しい、というよりは険のある顔つき。

 彼がそのような面持ちを見せるのは滅多にあることではないが、今の言葉のどのあたりが彼の気に障ったのか、私にはわからなかった。

 というより、先ほどからふたりがなにを問題にして会話しているのか、理解できていなかった。


 アベルが無欲で謙虚であるのは、昔からのことだ。

 基本的に、彼は他人になにかを求めることがない。誰かに助力しても、その見返りを望むこともなかった。

 しかし、それのなにが悪いというのだろう。

 たしかに時折どうかと思うこともあるが、一般的に言って、それは美徳に分類される気質のはずだ。

 彼が勇者として皆を守ろうとしているのだって、困っている誰かを見捨てられない善き人だからだ。


 それを信じきれないというのは、その人自身の問題であってアベルに責任があることではない。

 彼はただその使命を果たすために、全力を尽くしているだけなのだ。

 責められるいわれなんて、あるはずもない。


「怒ったかな、アベルくん? だがね、それは君の独りよがりの――」

「神殿長、もういいんです」


 なおも続けようとした神殿長の言葉を、アベルは遮った。

 ゆっくりと、首を横に振る。

 その顔からは、もう険は消え失せていた。

 神殿長を見上げる目には、相手を思いやる心が感じられた。


「僕は勇者ですから。自分で、そう決めたんです。だから、必ず使命は果たします。……心配は、しないでください」


 その言葉を聞いた神殿長の顔が、歪む。

 怒りとも憎しみともつかない、或いは悲しみにさえも見えるような複雑な面貌だった。


「これだけ言ってもまだそんなことを口にするのなら、あとは勝手にするがいい」


 吐き捨てるように、神殿長は言った。


「勇者などというものに、少しでも期待した私が愚かだったよ。所詮、君達はそういうモノだったね」

「…………」

「いいさ、わかっていたことだとも。私如きの言葉で揺れる心であれば、初めから勇者になどなってはいなかっただろうさ。だからこれは、きっと愚痴のようなものなんだろう」

「…………」

「長々と付き合わせてしまってすまなかったね。……さ、もう帰るといい。明日は寝坊などしないよう気をつけなさい」

 

 疲れたようなため息を吐くと、神殿長はこちらに背を向ける。

 その背中が、これ以上の会話を拒絶していた。

 

「……それでは、失礼します」


 やや沈んだような面差しで頭を下げたアベルに続いて、私もお辞儀をする。

 応えは、なかった。

 顔を上げて見れば、神殿長はこの部屋に足を踏み入れたときと同じように、無言で色硝子を眺めている。

 

 アベルはその姿を少しの間見つめていたが、やがて小さく息を吐くと、振り返って出入り口に向かって歩きだした。

 私もそれに続く。

 

 礼拝堂を出る直前。

 背後から、神殿長の声が掛かった。

 

「幸運を。勇者アベルに天の御加護がありますように」


 ――これほど心のこもっていない祈りというものを、私は初めて耳にした。

  

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