第一章「転入初日は大人しく!」-2
楓の先導により連れられたのは定番の職員室。
「失礼します天宮陽斗を連れてきました」
「おー来たか」
白髪黒目の若い男。野暮ったい白衣とメガネ。
理科教師と予想。
「この人が担任の如月先生」
「おい出水、俺は先生だから。『この人』はねえだろ」
「それなら、まともに授業すればいい。それなら先生は尊敬され、私たちの学力も上がる。両者ウィンウィン」
あまりいい先生ではないようだ。
「では、私はこれで」
言いたいことを言って退室する楓は満足そうだ。
「はぁ、まぁいい。それじゃあ、天宮。教室行く前に少し面談するぞ」
「わかった」
「名前は?」
「それ聞く意味あるか?」
「形式上だ」
「天宮陽斗」
「生年月日と年齢」
「八月三十日。今年で十六」
「その黒髪と青色の瞳は元からか?」
「たぶんそうだ」
「出身は?」
「覚えていない」
「今までどこにいた」
「黙秘権を行使する」
「…」
「…」
面談というよりはプロフィールの確認か。
わざとらしく溜息をつく如月。
「なぁ、お前の情報が名前と生年月日ぐらいしかないのは何でだ?」
「そりゃあ、それしか覚えていないからな」
そう、学園側には名前と生年月日と年齢しか覚えておらず、記憶喪失ということにしている。生活には支障はないということも。だから、聞かれないと思っていたのだがそう甘くはないか。