第一章「転入初日は大人しく!」-1
《開花者》
ルミエと呼ばれる不思議なエネルギーを持つ進化した人類。
世界人口の約六割を占め、三大国と呼ばれる三つの大きな国が開花者の育成と保護をしている。
そして、俺がいるのがその国の一つ《アトラス》だ。
転校初日の通学路。
学校など一度も行ったことがないので正確には新入生になるのだろうが、色々な事情を踏まえ二年生からということになった。
勉学のほうは一通りやっていたのでそこは問題ない。
問題なのはあまり人と関わってこなかったことによるコミュニケーション能力の欠如だろう。
二ヶ月前まで同年代と話したことはない。
唯一の話し相手だったのがあのぶっ飛んだ女だったから余計に心配だ。
「陽斗様なら大丈夫ですよ」
その心配が顔に出ていたのだろうアトラス国第一王女龍泉寺アリサに気を遣わせてしまった。
銀糸のように美しい髪に青い瞳。
可憐を体現したような子。
アトラスの秘宝と裏で呼ばれているだけのことはある。
「それよりもその『様』付け何とかしてくれない?確か二ヶ月前から言っているはずだが」
「わかりました陽斗様」
聞く気ないなこれは。
普段は大人しいがこういうところは頑固と最近知った。
「けど、外で呼ぶなよ。お前に『様』付けされたら何事かと思われる」
「…わかりました陽斗先輩」
妥協してくれたようだが先輩か…何かむず痒い。
そうこうしているうちに門につく。
ここがアトラス学園か…とにかく広いな。
先に校舎らしきものが延々と見える。
「では、楓さん。陽斗先輩をよろしくお願いします」
「わかりました」
どうやら、アリサの高等部一年の校舎は別らしい。