プロローグ-2
どうして、俺は…。
泣いているんだ。
「それが心というものだ。少年」
後ろに立っていたのは見ず知らずの仮面の男。
一目見て只者でないことがわかる。
「我々は君を歓迎するよ。四番目」
男は手を差し出してくる。
掴もうとした瞬間に見えた手の甲の入れ墨を見てその手を払った。
「悲しいな。せっかく見つけた同胞を殺さないといけないとは」
「確かに俺は人殺しだが、お前らと一緒にするな」
あとのことは覚えていない。
気が付いたときにあのときと同じように見知らぬ天井が見えた。
違ったのは顔を覗き込んできたのはソフィアではなく、銀髪碧眼の少女だった。
久しぶりにあの夢を見た。
二か月前の出来事だが、数十年も前のように感じる。
悪夢というわけではないが、どうにも目覚めが悪い。
寝なおすか…。
現在時刻は午前七時。
そんなことをすれば朝食を食べられないことは目に見えている。
気怠い体を起こしノビを一回。
コンコン
「どうぞ」
『失礼します』
入ってきたのは制服を着た同い年の緑髪白眼の少女。
名前は出水楓。
二か月前に知り合ったばかりだが、それなりに仲の良い間柄だと思う。
「姫様から伝言。『もうすぐ朝食が出来るから食堂に来てください』だって」
「了解。すぐ行く」
楓が退室しカーテンを開ける。
春だというのに憎らしいぐらい照りつける太陽が恨めしい。
視線をしたにすれば豪華な庭園と手入れをしているオジサン。
目があったので会釈。いつもご苦労様です。
未だに信じられないことだが、研究所暮らしから一転し今はとある城にやっかいになっている。しかも、かなり位の高い人の城だ。
その城の姫に飯を作らせているのにもかかわらず二度寝を考えた俺は何と罰当たりな人間なのだろう。
制服に着替え机に置いた生徒手帳を一瞥。
アトラス学園高等部二年A組 天宮 陽斗
それが今の俺の肩書だ。