プロローグ-1
白塗りの天井。
それが最初に見たものだった。
「やぁ、起きたかい?」
顔を覗き込んできたのは白衣を着た金髪碧眼の二十代前半と思われる女。
その顔を見たとき…何故か殺意が湧いた。
脊髄反射のように飛び掛かり、拳をふるう。
しかし、普通の子供のパンチだ。
女は軽く受け止めあいている手で空中に浮いたカルテに書き込んでいく。
「ふむふむ、思ったよりも健康のようでなにより。だけど、女性を殴ろうとするのはいただけないな」
気づいたときには宙を舞っていた。
体は重力に引かれ落下していく。
数メートルの高さまで片手で投げられたことよりもあの高さから落ちて無事なことに驚いた。
「どうやら、第一段階はクリアしているようだ。先に自己紹介しておこう。ボクの名はソフィア。君の担当研究者だ」
それがあの女、ソフィアとの出会いだった。
それかというもの毎日のように何かの実験をされ、健康診断を繰り返す毎日が始まった。
最初は訓練や実験が苦と思っていたが数か月で慣れてしまった。
きっと、死ぬまで変わらないだろう。
そう思っていたが…そのときはやってきた。
大火に覆われた研究所。
血だまりに倒れる白衣を着た者共。
その中には彼女もいた。
「どうやら、実験は成功のようだ」
死にかけているにも関わらず、ソフィアは冷静だった。
「おめでとう。これで君もここを卒業できる。優秀な先輩たちに早く会わないようにせいぜい努力することだ。私の教えたことはまだ覚えているかな?君は物覚えが悪かったから苦労したよ」
ソフィアは今まで見てきた中で一番笑っていた。
まるで、我が子の門出を祝うように。
恨みしかなかったのに。
どうして、俺は…。