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番外編 0-DAY【Ⅳ】

道路


(なかなかに興味深い結果に終わったな…)


実験が終わり、前島は荷物をカバンに纏めてから工場を後にしようとしていた。


(実験自体は成功した…問題は結果だ。)


実験の結果【奴ら】に関してわかった事を考えながら歩く…

(あの時の映像と体験から推察するに、【奴ら】は基本的に音に反応する、それも大きな音の方に反応する傾向が見られた…噛まれると【奴ら】の仲間になる、噛まれてから早くて約10秒…だがこれは噛まれた人間によって個体差が見られた…考えられるのは噛まれた数の違いによる物、【奴ら】の肉体は人間の頃の力に依存して居る、つまり…【奴ら】になった所で怪力などを発揮する事は無い…)


「前島ぁぁあああ!」


考え事をしながら歩いていたら背後から自分を呼ぶ怒声が聞こえた…


(…おや?あの状態から生き延びるとは…予想外だな、まぁ穴だらけな作戦だったからね…)


「テメェ…アレはどういうつもりだ⁉︎」


「…どういうつもりも何も無いですよ…そうですね、先輩は生き延びたから少し教えてあげてもいいですよ?」


(予想外の出来事だが…まぁいいか…)


「答えは簡単…実験ですよ、『奴ら』がどんな生態をしているかを調べただけです…これから先生きる為に必要な情報を集めただけですよ」


話しながらカバンを漁る…目当ての物が手に当たり、話が終わると同時にカバンを漁るのを止める。


「ふざけんな!テメェ!」


我慢の限界だったのか前島に殴りかかろうとするがそれは叶わなかった…何故なら…


パシュ!パシュ!


「っ!ぐああああ!脚があああ!」


音とともに痛みで地面に転がる…痛みの原因である太ももを見るとそこには釘が2本深々と刺さっていた…


「はぁ…馬鹿正直に殴りかかろうとするとは本当に頭悪いんだね…センパイ…カバン漁ってたの見てましたよね?何かあると思うのが普通ですよ?」


安全装置を改造して何時でも射てる様にした釘打ち機が前島の右手に握られていた…


「ははっ、僕はこの会社に感謝してるんだよ…実験場になってくれたりこういう武器をくれたりしたからね…さて、そろそろかな…そら、来たよ…センパイ…」


『アアアアアアアアアアアアア』


『オオォオオオオォオォ』


「な、なんでだ?チキショウ!あいつら!また…く、来るな!」


片脚に刺さっている釘のせいで上手く立てないのか、脚を引きずりながら逃げようとするが殆どその場から動けていない。


「気付いて無いみたいだから説明してあげるよセンパイ…『奴ら』は音に反応する、センパイはかなりの回数大声を出している…『奴ら』からしてみればセンパイは格好の標的…いや餌かな?どちらにしろもう助かりませんね?あなたはもうまともに走れないでしょうし、走った所でまた『奴ら』を呼び寄せるだけだ…と言う事でおとなしく『奴ら』の足止めをして、僕の逃げる時間を1秒でも稼いでくれ。」


周りを見るとゾロゾロと大量の『奴ら』が周りから集まって来ている…『奴ら』は真っ直ぐこちらに走って来ている…


(そろそろ限界だな…)


「それではセンパイ…さようなら。」


前島はゆっくりと音を立て無い様に歩き出す。


(奴らは音を立てている奴に群がる…こんな状態なら音を立て無い様にしていればやり過ごせる…幸い五月蝿いのが近くに居るから僕の方に『奴ら』は来ない)


「お、オイ!前島!助けてくれ!頼む!今までの事…ぎゃぁあああぁああ!」


最後の言葉も繋げられずに叫び声が上がる…前島は少し気になったのか振り返るが、其処には大量の『奴ら』に食い荒らされている人間の捕食現場が見えるだけだった…


鮮血が飛び散り道路を紅く染める…『奴ら』が群がり過ぎて捕食現場はまともに見えないが飛び散る赤と叫び声が中の凄惨さを物語る…


(………こんなもんか………)


前島はすぐに捕食されている餌から興味を失い視線を戻し歩き出した、その時の表情はまるで能面の様に冷たいものだった…


(これからは楽しくなりそうだな…)


歩きながら先の事を考えるすると、冷たい表情のまま口元が薄く笑い始めた…その笑みはしばらく消える事が無かった。




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