番外編 0-DAY 【Ⅰ】
0DAY
世界の崩壊が始まる前日に僕が願った事、それは…この世の変革だった…
「オイ!速くしろ!」
「馬鹿!違う!あぁクソ、もういい!使えないな」
「ボケ!もう帰れ!お前なんか要らねえよ!」
「もう一年になるのにこの程度も出来ねぇのか⁉︎」
社会人になって一年…毎日毎日怒られる日々が続いていた…怒られない日など1日たりともなかった…やる気が無いわけでは無い…むしろやる気がある日の方が怒られた気がした…小さなミスでも怒鳴られ当たり前の様に手や足を出して来る上司や先輩…
僕には社員が…いや、会社に居る人間、全てが敵に見えた。
仕事を辞めたいとも思ったが、この就職難の時代新しい職は簡単に見つかる物ではなかった…
大学生の就活では100回以上面接を受けたが今居る会社を除き全て落ちた…当時は受かっただけでも良かったと思っていたし、頑張ろうとも思っていた…しかし会社に入り現場に配属が決まり地獄の日々が始まった。
最初の頃は平気だったがストレスが溜まり、今では会社に行く事すら嫌になってしまった…
(認められない世界なんて要らない…変われば良い…僕が認められる世界に…)
…そう、だから僕は変革を願った…この地獄の様な世界の変革を…
工場 1F 現場エリア
「馬鹿!本当に使えないな!テメエは、もう辞めちまえよ!」
「すみません」
僕は今日も怒られていた…今回はミスではなく理不尽な事を指摘されていた…
意識がどんよりとして行くのがわかる、今日は始まったばかりなのにいきなり怒られるとは、正直ツライ…怒声を聞き終わり作業に戻る、そこでも僕の陰鬱な気分は晴れない。
(まったく、面倒くさいな…早く帰りたい)
最近は仕事中に帰りたいと思う様になって来ていた…そんな時にあの放送が流れて来た、そう…僕の運命をいや、世界を変えた放送が…
【社員は作業を中止し、至急事務所に集合して下さい!繰り返します社員は作業を中止し、至急事務所に集合して下さい!】
どこか焦りを感じる放送だったのを覚えて居る。
(なんだ?一年働いていたがこんな事は初めてだ…)
僕は訳も分からないまま作業を中止して事務所に向かおうとした。
(…先輩に聞くか?いや…聞いて怒られるのも嫌だし、止めておこう)
些細な事でも相手が怒る口実になる事を俺はきちんと理解していたので迂闊に先輩に話しかけ無かった…上司と先輩か事務所に向かって階段を上って行ったので俺も続いて行った。
工場 2F 事務所
事務所に着いて最初に見たものは事務員達の青白い顔だった…顔面蒼白とはこういうことなのだと思った、ふと周りを見るといつもは点いていないTVが点いてた、どうやらニュースを見て事務員達は顔色を悪くしている様だ。
周りで僕の上司と部長や社長が話し合っているが僕の頭には入って来てはいなかった、そんなどうでも良い事よりもニュースの情報に意識を傾けていた…
(全世界規模の集団暴動?今から3時間前に発生…鎮圧しようとした警察や軍隊までも加わって更に規模が大きくなっている?妙だ…)
僕はニュースを見ながら奇妙に思っていた…何故このニュースを見て、事務員達が俯いているのか…僕は外が気になった。
(全世界規模の暴動…そして事務員達の状態…まさか…まさか…)
恐る恐る窓に近づく、俺は半開きのカーテンから外を見て戦慄した…
其処にはいつもの風景はではあり得ない風景が広がっていた…工場の柵の外に群がる暴徒、暴徒、暴徒、その数200人弱。
俺は工場内の監視カメラを見た…其処にはいつもの工場の風景とはかけ離れた、自分だけ別世界に来たかと疑う様な世界が既に出来ていた…俺のいた部署は平和だった…恐らく偶然だろうが俺は心の底で胸をなでおろしていた。
(他人の不幸でホッとするとか…最低だな…でも実際他人事だし、仕方ないな。)
いまだに周りは混乱している…意外にも僕の頭の中は冷静に物事を考え理解していく。
(全世界規模の暴動とか言ってたが恐らく違うな…世界中であの現象が起きているとしたら…もし僕の考えが間違いじゃ無いのなら…世界は変わる…それも劇的に…)
僕は考えながらも辺りにあるもので使えそうな物を探す…周りの奴らに気づかれない様に注意しながら…
(いいぞ…楽しくなりそうだ…これがこの先どうなるのか始まったばかりだと言うのに、楽しみで仕方ないな…)
不思議と恐怖は感じなかった…それどころかむしろ逆だった、現に僕は口角が上がるのを周りの奴らにばれない様にするのが大変な位だ。
(そう言えば本で読んだ気がする、人間はこう云う異常事態や緊急事態、所謂突発的な場面に直面すると本当の自分…本性が出てくるらしい…)
随分前に読んだ本で題名は忘れてしまったが、今まさにその人間が本性をさらけ出す場面に僕はいる。
(勿論、その中には僕自身も含まれているんだけどね…あぁそうか…だからこんなにも嬉しくて、楽しいのか)
飛び交う怒声や叫び声がまるでオーケストラを聴いているみたいに心地よく感じる自分がいる。
社員たちの慌てる姿や混乱する姿を見て高揚していた…
(他人を見て嘲笑う…これが僕の本性か…だけれどもね…まだ全然物足りないな…)
その時僕は薄く嗤っている事に気づいていなかった。
そうだ、1つだけ…言いたい事がある、僕は別に君たちを恨んでなどいない。
正直、君達の事なんて何とも思っていないんだ…だけれどもね、やられっ放しっていうのは僕の柄じゃ無いんだ…だからせめてものお返しをさせてくれ。
君たちは僕に理不尽を与えてくれた…だから僕も理不尽を与えてあげようと思うんだ…
勘違いし無いでほしいがこれは復讐ではない…さっきも言ったが僕は恨んでなどいない、寧ろ感謝している程だ…僕がこれほど人間をどうでも良いと感じられるという事を教えてくれたんだからね、もちろん全くそういう感情がないと言ったら嘘になる…僕は人間だからね。
だからこそ、これからする事は僕にとってとても興味深い事なんだ…一石二鳥、いや三鳥になるのかな?
さぁ、確かめさせてくれ…
僕は誰にも気付かれない様に工事への扉を開けて下に向かった。




