30 痛み
マンション3F 自室
顔が痛い、顔面が痛い、顔が熱い、とりあえず痛い…
ゾンビが現れて4日目、俺は自宅のベッドで戦っていた…ゾンビとでは無い、激痛と戦っていた…昨日のヘルメットゾンビの頭突きがかなり効いている、もうなんか…あり得ないぐらい痛い、顔全体が熱を持って居て触ると痛いし腫れているのか触らなくてもズキズキ疼く…要約すると何かしても何もしなくても痛い。
「しっかりしてください、黒鉄さん」
「菜摘…ここは、大丈夫ですか?とかじゃないか?」
「大丈夫に見えませんから…タオル変えますよ?」
「ありがとう…痛い!痛い!」
菜摘にタオルを交換して貰ったがそれすらも痛かった…
(そう言えば俺銃撃ったんだよな…)
凄い衝撃だった…引き金を引くとすぐに来る反動、パンッと響く音、初めて嗅ぐ火薬の匂い…撃った後に感じたのは銃の威力への恐怖だった…こんな世界になってまだ4日目…俺は昨日の時点でもう銃を使っていた。
(ゾンビ相手ならまだ良い、罪悪感が少ないから…でも、この調子だといつかは…)
そこまで考えて俺は考えるのを止めた…
考えを放棄して目を閉じると眠くなって来たので俺は睡魔に身を任せ意識を手放した…
ーーーピチョンーーー
ーーーピチョンーーー
ーーーピチョンーーー
水の音が聞こえる…
ーーーピチョンーーー
ーーーピチョンーーー
ーーーピチョンーーー
なんか…こんな事、前にもあった気がする…
俺は周りを見渡すが真っ暗で何も見えない。
ーーーピチョンーーー
ーーーピチョンーーー
ーーーピチョンーーー
視界が閉ざされた中、規則正しい水音が聞こえる…俺は水音がする方へ歩こうとして脚が動かない事に気付く、足の裏が地面から離れない…
ーーーピチョンーーー
ーーーピチョンーーー
俺はふと思い出した様に右手を見た…そこには血塗れになっていた銃と右手があった…
ーーーピチョンーーー
水音は右手と銃から滴り落ちる血だった…
気付くと俺は血溜まりに立っていた…
周りには何も無い…血溜まりと銃を持った俺だけがそこにいた。
水音はもう聞こえ無い…
…嫌な夢だった
「起きてたんですか?黒鉄さん…」
俺が起きるとほぼ同時に菜摘が部屋に入って来た。
「今丁度起きた所だよ、ところで…今何時ぐらい?」
カーテンが閉まっているのと先程まで寝ていた所為で時間がわからなかった…
「もうすぐ19時頃ですよ、黒鉄さんグッスリでしたから…」
(ほぼ丸一日寝てた訳か…どうりで腹が減ってるわけだ…)
「もうすぐで夕飯作り終わりますので起こしに来たんです、それでは私は戻りますので準備が出来たら来て下さいね」
菜摘は俺が起きているのを確認すると、すぐにキッチンに戻っていった…俺は寝汗で濡れた寝巻きから菜摘が置いてくれていた部屋着に着替えてキッチンに向かった。
ちなみに、菜摘が作った料理はとても美味しかった。




