29 監視
マンション 3F
あれから迂回してマンションに到達した、到達すると直ぐに先ほどのゾンビを監視し始めた。
「群がってるゾンビが増えてる…」
「さっきは三体だったのに、五体に増えてますね…」
(ゾンビ達が喰っているのは間違いなく俺が倒したゾンビだ…彼奴らは人間だけを喰うわけじゃないって事か?)
気になり監視をしたのはいいが、正直な所見ていて気持ちの良いものではない、当然だろう…ゾンビとはいえ人間の形をしているモノが人間の形をしたモノを捕食している光景など誰が見たいものか…
しかし何故か俺はこの光景が重要な事に思えてしまった、だから見る…嫌でも見る…もしかしたらゾンビについて何かわかるかもしれないから…
(食欲が失せる…今日の夕飯に肉系はNGだな…しかし、まだ群がって来るな)
最初の三体は満足したのか立ち上がり、フラフラと周りを歩き出した、まるで順番待ちの様だった、捕食が終われば立ち上がり次のゾンビに場所を空ける、その間にもう次のゾンビが待っている。
最初の三体はフラフラとどこかに行ったが未だにゾンビは増え続けざっと数えても十体ほどになっている、まるでエサに群がる鳩…いや、ゴミに集るカラスだろうか?
どっちに似ているかなどどうでも良かった。
「菜摘…俺が見てるから部屋に入って荷物を整理してくれないか?」
これ以上菜摘にこんな光景を見せようとは思わなかった…例えこれから嫌でもこんなシーンは見ることになるとしても。
(これは甘えかな…それとも偽善?)
…わからない、でも見せたくなかった…今は…今だけは。
「わかりました…」
菜摘は俺の気持ちを察した様に、聞き分け良く部屋に入っていった。
「ふー、さてと」
ため息をひとつ吐き俺は捕食現場の監視を続けた…
ゾンビの捕食速度はとても速く感じた、人体を20分程で食い付くしたのだ、しかしというかやはりというか骨だけは残っている。
(漫画見たいに骨も残らず食べるわけじゃないらしいな…やっぱり自分の歯で嚙めないモノは喰わないか…いや喰えないだな、肉ならなんでも喰うのか?それとも人肉だけ?)
俺は疑問点を考えながら顔を顰める。
(情報が少ないな…試したい事は出来たけどな…試す価値があるかどうかは微妙な所だなぁ)
考えている内に捕食が終わったらしく、ゾンビ達はもう対象に興味も無い様子でフラフラとバラバラにさまよい始めていた、その場に残されていたのは無惨に喰い尽くされて元の面影もない骨と大量の血溜まりだけだった。
(ゾンビは人間を捕食する、捕食中にゾンビになったら捕食を中止する…しかし死んだ、いや…倒したゾンビは喰らい尽くした…この違いに何かあるのだろうか?そもそもなんで…いや考えても今は判らない、判断する材料がない)
俺は思考を一旦終了し、荷物を整理している菜摘に合流すべく部屋に帰って行った。




