25 武器調達
歩道橋
「はぁ…はぁ…」
「ぜーぜーぜー」
俺達は先程の歩道橋まで全力で走り
歩道橋の上で座り込み息を整えようとしている。
「はぁはぁ…黒鉄さん…あそこ…見てください…ゾンビが居なく…なってます」
菜摘がホームセンターの方を覗き見る、菜摘も全力で走りきったので息が上がっている。
「ぜぃ…ぜぃ…ほ、本当だ…今なら…ホームセンター…入れ…そうだな…」
菜摘に言われ、俺は呼吸を整えながらホームセンターを見る。
(駐車場に居たゾンビがい無い…さっきの大軍はあいつらか…)
「ぜぃ…ぜぃ…ゾンビ共がいない内にホームセンターの中に入ろう」
「は、はい…黒鉄さん…はぁ…はぁ…」
俺達は呼吸をなるべく整えながらホームセンターに足を進めた、まだ息が苦しいが、早めに行った方がいいだろう、何時までもゾンビが居ないとは限らないのだから…
ホームセンター入口
ウィーン、と無機質な音を立てながらホームセンターのスライドドアが開く、入口から見た限りでは中にゾンビは居ない。
店内は電気も付いているのに何処か暗い雰囲気が漂っている気がする、菜摘も同じ様に感じたのか明らかに警戒の色が顔に出て居る。
(気味悪いな…)
これが俺の正直な感想だった、店内は少し荒れているが物凄い荒れていると言う訳でも無い至って普通だ…なのに何故かそう思った。
「…慎重行こう…」
俺は菜摘の方を振り向かず小声で伝える。
「…はい…」
背後から小声で返事が返ってきた、それを聞いて俺は前に進み始めた。
(なんだ…なんでこんなにも気味が悪い?)
俺達は警戒しながらも使えそうな物を探す。
コツコツ…コツコツ…
周りの音はおれと菜摘の足音だけが小さく聞こえるだけだ…
使えそうな物をカバンに詰めながら進むと工具売り場に着いた。
(…おっ!バールだ!結構長いな、それに重量もなかなかに有る!こいつは使えそうだな…)
俺達は自分達が扱える大きさのバールをそれぞれ取った。
(結構重い…バットなんかより全然頑丈そうだな…これでゾンビ殴ったら手がイカれそうだ…後でテーピングとかでグリップを作ろう…)
バットでもなかなかの衝撃があったのだ、持ち手を作らないと自分が痛い、そんなことを考えながら俺はバールをじっと見た。
「黒鉄さん…」
菜摘が小さく俺を呼ぶ。
俺が菜摘の方を振り向く
「どうした?何かあったか?」
ゾンビだろうか?そう思い俺はバールを構えながら警戒をする。
「いえ…ゾンビとかではなく…あれ使えそうだと思いまして。」
菜摘が指を指す、そこには靴コーナーがあった…
「……靴?」
この時の俺はとても形容し難い顔をしていたと思う。
「…黒鉄さん…あれはただの靴ではありませんよ…あの靴コーナーにある靴は爪先に鉄が入っています…所謂、安全靴です。」
菜摘は少し得意げに話している。
(…いや…知ってるけどな〜まぁ、使えそうなのは間違い無いな…)
正直微妙だ…頭の良い菜摘が言う程の物ではなかった。
「黒鉄さん安全靴は馬鹿に出来ませんよ? …後私が言いたいのは安全靴じゃなくてアレです!」
菜摘は俺が言わんとした事を表情から察したらしい…俺は改めて菜摘の指の方向を見た…
そこには…
「なんだ?アレ?」
「…黒鉄さん…」
菜摘がジトッとした目で見て来た…
菜摘が指差した物が何なのか、わからなかった・・・・いや、見た事はあるが思い出せない。
以下菜摘の説明…
「あれはトランシーバーです、簡単に言うと無線で、通信して会話出来ます。マイクも無線機も有るみたいなので即、使えますよ…他にも無線機は、特定小電力と言う無免許で使用出来る物と…以下略…」
長い…思ったより長かった無線機の話と更に安全靴のメリットまで説明された。
(菜摘ってこんなにも喋るんだ…知らなかった…)
結局靴は安全靴に履き替えた。
俺は革のブーツ、菜摘はスニーカータイプにした。
無線機は詳しく知らないので適当に選んだ、
マイクは首に巻きつけ、イヤホンが着いている物を拝借した。
「そろそろ頃合いだな…菜摘、帰るぞ。」
大分装備が充実したので俺はマンションに帰る為に菜摘を呼んだ。
「わかりました」
菜摘は小さく返事を返した
(装備も充実して来たし帰り道は少し楽になるかな…)
俺はこの時のそう思っていた…
だけど…この後、俺は知る事になる。
ゾンビの恐ろしさを、イレギュラーの異常さを…
そして……再認識する事になる……このゾンビが居るという現実を……




