21 話し合い
コンビニ 事務所
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
あれから、俺達はコンビニの自動ドアをロックしてコンビニに立て籠もっていた、いや違う立て籠るなんて言う立派なものじゃない…ただ、あの口裂けゾンビが怖くて、恐くて、堪らなかった…それだけだった。
菜摘も俺も無言だった。
チッチッチッチッチッ
時計の音がやけに大きく聞こえた、ふと気になり時計を見るともう夜の9時過ぎになっていた。
事務所の中には時計の音しかしない。
グゥー
訂正…俺の腹の虫が鳴いた。
「クスッ…クスクス」
「わっ笑うな!仕方ないだろ、生理現象なんだから!」
俺の腹の虫の音に菜摘が笑う、笑ってくれる。
(そういえば朝からメシ食ってないな…スゲェ腹が減った…)
「そうですね…確かにお腹すきましたね、何かたべましょうか。」
「あぁ、食料は沢山有るからな!食うか!」
それから俺と菜摘はコンビニの売り場にある日持ちのしない物を中心に選び事務所に持っていき、少し遅めの夕飯を食べる。
「いただきます。」
「いただきます。」
菜摘はサンドウィッチ2種類とサラダを持って来ていた。
菜摘はサンドウィッチをまるで小動物の様に食べる。
(なんか…ウサギが人参をゆっくり食べるとこんな感じになりそうだな…)
そんなことを考えていると菜摘がサンドウィッチを事務所の机に置いた。
(見てるのばれたかなぁ〜)
少しだけ菜摘は間を空け…
「黒鉄さん…多くないんですか?それ…」
…口を手で抑えながら呟く、目線は俺のコンビニ弁当達に向けられている
「いや、質問を質問で返すが、逆に足りるの?それだけで…」
「はい…いつも大体これ位です。」
「マジか…倒れんなよ…」
「はい…わかりました?」
菜摘は首を傾げながら答える。
(女子高生の食事はこんな感じなのだろうか?それとも、俺が食べ過ぎなのだろうか?)
俺は目の前にある弁当5種類を見る。
「お弁当5つは食べ過ぎじゃないですか?」
「いや〜コンビニ弁当って少なくね?」
そんな会話をしながら食事をした。
食事後、俺達はだいぶ落ち着いた雰囲気になった。
「さて、さっきの事について考えよう。」
勿論あの口裂けの事である。
「イレギュラー、ですね。」
「奴は俺が出会ったイレギュラーとは明らかに雰囲気も行動も違った。口裂け…さっきの奴だか…あいつには完全に知能があった様に見えた。」
雰囲気と言うか…あのギラギラした眼光は忘れられない
「はい…黒鉄さんから聞いたイレギュラーの像とは掛け離れてます、しかも他のゾンビに命令していました。」
先程の事を考え菜摘が少しだけ震えた様に見えた、実際怖いのだろう。
「そうだ、俺が最初に会ったイレギュラーは音じゃない何かを感じて俺を襲った、だが知能があった様には見えなかった。」
少なくとも口裂けの様な動きはなかった。
「じゃあ、何に反応したんですか?」
「ずっと考えていたんだけれど…視覚か嗅覚だと思うんだ…あいつはゾンビになってすぐ俺の方を向いたからな…」
「じゃあイレギュラーには視覚があるって事ですか…」
「そうだな…だけどゾンビに対する決め付けや思い込みは良くないと思う、結局これは想像でしか無いからな…実際は違うかも知れないし…臨機応変に行こう。」
「わかりました。」
「そろそろ寝よう…明日は家に戻ってから武器を集めるぞ、流石にバットと箒の柄だけじゃ心もとない。」
「確かにそうですね、箒の柄はもう、色んな方向に曲がって来てますのでそろそろ限界だと思います。」
菜摘が箒を取り出す、確かにもう、限界と言った感じだ…無理も無いゾンビが出現してからずっと使って来た、そもそもただの箒の柄だ…よくここまで保った方だ。
「わかった…じゃあ少し遠いが明日はホームセンターに行ってみるか」
ホームセンターなら何かしらあるはずだ…
「ホームセンターですか…色々ありそうですね。」
菜摘は楽しみ、と言った感じだ。
「じゃあ寝るか…菜摘はロッカールームで、俺はここで寝るよ…あぁ、ロッカールームは鍵付いてたから安心して大丈夫だ。」
「ありがとうございます、それではお休みなさい。」
言いながら菜摘はロッカールームへ入って行った。
「あぁ、お休み…」
ガチャリと鍵が閉まる音が聞こえた。
(俺も寝るか…)
かなりの疲労が溜まっていたのか、俺はすぐに意識を手放した




