「Doubt!」 -LEFT SIDE-
続編?の「RIGHT SIDE」と併せてお読みください。
戯曲って、こうやって文字にすると誰がだれかホントわかんないですねw
【LEFT SIDE】
<キャスト>
A リーダー
B 小心者
K いい加減
L 理知的
N ヤカラ
O のんびり
S 不思議
T 猜疑的
※金曜の女
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暗転中
SE:パトカーのサイレン・複数
FOとともに溶明
とある一室
黒ずくめにサングラスをした男女が8人
互いに警戒し合い、緊迫した雰囲気
A 「ともあれ」
Aに注目する面々
A 「当面の危機は脱した訳ですが」
O 「そうですね~、よかった」
N 「どこがだよ! サツがうじゃうじゃしてんじゃねーか! どういうこ
とだよ!」
L 「ちょっとお静かに」
B 「そそそうですよ、私たちホントやばい状況なんですから」
K 「へへ、そうかい?」
B 「そうですよ!」
T 「大体、なんでこうなっちまったんだよ」
一瞬、間
T 「なんでだよ。おい」
T、一同を見回す
沈黙の一同
L 「裏切り者がいる、とでも?」
緊迫する一同
A 「まさか」
B 「そ、そんなわけ」
N 「誰かがサツと繋がってたってことか?!」
T 「誰だよ! あ?!! てめぇか?!!」
K 「T、あんたじゃないの?」
T 「んだとこら!」
O 「そ、そんな大声だしちゃぁ」
T 「うるせぇ!」
N 「てめぇがうるせぇ!!」
S 「あぁあ~!!! 時が見える!!」
B 「え? どこに?」
各々、騒ぎ出す一同
L 「(大きくて手を叩き)はいはい、ともかく!」
静まる一同
L 「(Aに)どうします、リーダー?」
A 「え、えっと、そのリーダーってのやめてもらえます?」
一同 「なんで?」
A 「なんでじゃなくて。私は便宜上、仕切る担当だっただけで・・・
コードネームは『A』ですし」
K 「そんなのどうでもいいんだよ」
L 「よくありませんよ、K。ようく考えて見てください。今回の仕事は」
N 「んだよ! ちょこっと銀行襲って」
O 「さらっとお金頂いて」
B 「すぐにみんな解散」
T 「お互い知らない者同士だから」
S 「えびばでぃ・はっぴー!!!」
K 「ああ、Sの言うとおりハッピーに」
N 「なってねーからよ! これよ!!」
B 「Nさん、声大きいって!」
N 「んだと! てめ、その、あー!」
O 「こちらはBさんです」
B 「ちょっとOさん!!」
T 「『B』ってことは本名は馬場とか」
K 「あ、馬場かぁ」
O 「馬場さん」
S 「♪ばばばばーん!(運命)」
K 「うまいね」
B 「あああああ!!! ち、違います! 私は『坂東』です!って、
はっ!!(口を押さえる)」
K 「あははは」
O 「では改めまして坂東さん」
S 「ゆでたまごー」
L 「ちょっと、ちゃかさない」
A 「みなさん! お静かに!!」
更に騒ぎ立てる一同
と、激しいノックの音!
静まる一同
T 「サツか?!」
A 「しっ!!」
また一瞬の間
と、ずかずかと入ってくる隣人・金曜の女
金 「ちょっとあんたら!! うるさいよ!!」
一同を見渡し、不審がる金曜
金 「あんたらさぁ」
緊迫する一同
金 「こっちゃ、隣で人生かかった話してんだ! ちったぁ静かにしやが
れ!」
一同 「は、はい・・・」
金 「それが謝る態度かぁ!! 並べー!!」
一列に並ぶ一同
金 「グラサン外せー!!!」
一同、気迫に圧されついサングラスを外してしまう
金曜、すかざず写メをぱしゃり
金 「はん。今度騒いだら覚えときなさいよ」
金曜、去る
ホッとする一同
が、急に騒ぎ出す
B 「や、やばい、やばいですよ今の!」
T 「俺たちの素顔が!」
N 「あのアマ!(銃を取り出す)」
O 「ちょっとそれは!」
S 「ばきゅーんばきゅーん」
A 「やめなさいN! それはまずい!」
N 「んだと!」
A 「(銃を突きつけ)やめろと言ってるんです!」
と、同時にLもNに銃を向ける
緊迫する一同
N 「な、なんだよL、てめぇまで」
B 「や、やめましょうよ皆さん」
K 「あはは、面白くなってきた」
T 「笑い事じゃねぇよ。ちょっとやめろよお前ら」
L 「冷静になってくださいN。ここでいらぬ騒ぎを起こして、巻き添えを
喰らうのはゴメンです」
A 「まだ我々は逃げ切れる可能性がある。ですから」
S 「お金ないけどねー」
O 「け、刑務所に行くよりはマシです」
A 「Oさんはまだ冷静な判断力をお持ちだ」
N 「けどあの写真!」
L 「あれだけでまだ我々が、今回の銀行強盗事件の当事者と結び付けられ
たわけではありません」
K 「まだ、ね」
B 「まだ・・・」
A 「さあN、どうします?」
間
N 「(銃を下ろし)わかったよ」
ほっとする一同
O 「・・・てゆーか、やっぱり皆さんそれぞれ持ってたんですね」
T 「なにを?」
O 「(自分の銃を取り出し)これ」
T 「そ、そりゃあまぁ、よ」
B 「えー! これって本物なんですか?!」
K 「(呆れて)おいおい、そんなんでよく今回の仕事請けたな」
B 「だって、お金がどうしても必要だったんです! でないと私、首を」
S 「しゃらーっぷ!!!」
B 「え?!」
S 「みんな一緒~~ 聞かないし~聞きたくない~ それルール♪」
L 「Sの言うとおりです」
B 「は、はい」
A 「この銃は本物ですが、あくまで『もしもの時』の為に配られたもの。
誰も他人を傷付けようなんて思ってませんよ」
K 「(Nに)コイツ以外はね」
N 「んだと!! (まだLの銃が狙っていることに気付き)くそ!」
L 「Tも減らず口を叩かず、少しは建設的な意見も言ったらどうです?」
T 「へん、ここから逃げ切れてからな」
O 「その後ではもうすでに、私たちは他人・・・ですよね??」
A 「計画ではね」
しばし、間
A 「(咳払い)さて、これからについてですが」
B 「逃げられますよね? 大丈夫ですよね?」
L 「それを今から」
T 「ちょっと待てよ!!」
O 「な、なんですか??」
T 「さっきの話! まだ決着ついてないだろう!」
N 「なにがだよ!」
T 「う、裏切り者・・・」
一同、緊迫する
S 「言い出しっぺが一番怪し~い!」
K 「あひゃひゃひゃ、墓穴~てか」
B 「そ、そうだ!!」
T 「うるせぇ! 馬場クソは黙ってろ!!」
B 「私は坂東です! って、ああもう!私の馬鹿ぁー!!」
N 「つーか、怪しいってんならこのアッパラパーのSだろうよ!!
なんだコイツ? オツムのネジ前世に忘れてきたか?! あ??!」
S 「お前が言うなー あはは!」
N 「んだと?!!」
笑いながら逃げるS
鬼ごっこのように追い掛けるN
A 「ちょっとS、ふざけるのも程ほどに」
O 「いやぁ、でも私、Sさん好きだなぁ。こんな緊迫した場面でも和ませ
てくれてますし」
K 「ああ、俺と気が合いそうだ」
B 「そうですけど、下手すりゃ刑務所なんですよ」
T 「んでも、こんなくるくるパー、なんの役に立ったってんだよ」
N 「(Sをやっと捕まえ)てめぇなぁ」
と、すかざずナイフを取り出し、逆にNを取り押さえ急所にナイフを
突きつけるS。その形相は別人のよう
L 「S!! ・・・相手は素人ですよ」
S、すぐ笑顔に戻り
S 「あはははは~~ (なんか歌う?)」
A 「L、あなたSとは顔見知りだったんですか?」
L 「ええ、以前別の仕事でちょっと」
A、B、K、N、O、T 各々顔がこわばり、LとSから距離を置く
L 「なんです?」
A 「今回の仕事は『ボス』からの指令で、メンバーはランダムに集められ
たはずです」
B 「そ、そうだ!!」
L 「そうですよ」
N 「それがなんでてめーら!」
L 「たまたまですよ。そういうこともある」
T 「あ、怪しい・・・」
A、Sに攻め寄る一同
A 「L、あなたは今回のメンバーの中でも、一番理知的で冷静に判断が
でき、頼りになる存在だと思っていたのに・・・ 残念です」
S 「(Aを指し)おまえー! 残念!!(ギター侍)」
L 「ええ、残念なのはこっちの方ですよ、A。よく考えて下さい。仮に私
とSが共謀したとして、この状況でなんの得があります?」
A 「そ、それは」
L 「計画は失敗し、お宝もないまま私たちはただ逃げるしか道はない。
警察からも、ボスからも」
K 「ボスからも? はは、なんで?!」
B 「け、計画は失敗したんです・・・ ということは」
T 「制裁?!!」
S 「お仕置きだべぇ~~♪」
O 「ま、まさかぁ~」
T 「おいA! リーダー!! どうなんだよ?!」
A 「それは、なんとも」
O 「可能性はなくはないってことですか?」
N 「ああ!もう!! んなことはどうでもいいんだよ!!」
一同、Nに冷たい目線
N 「な、なんだよ」
一同、沈黙
N 「なんだよてめーら、その目はよ!! ば、馬鹿にしてんのかぁ!!
ああぁ??!! 俺はよう、このあたりでもちったぁ名の知れた」
と、また、ドアを激しくノックする音
緊迫
またずかずかと入ってくる金曜の女
近くにいたBの耳を乱暴に掴み
金 「あーあー! 聞こえてますかぁ?!! ブラジルのみなさぁーん!!」
B 「ひぃいい!!」
沈黙
金 「静かにしろって言いましたよね? ええええ、ワタクシ言いましたで
ございましたでございますわよねぇぇぇ???」
一同 「・・・・・」
金 「(携帯を見せ)次やったら、これ、ネットに晒すぞ」
慌てる一同
金曜、去る
A 「N、いい加減に」
N 「わ、悪かったよ」
O 「みんなで仲良く、逃げる算段をしましょう」
K 「仲良くって(笑い)」
T 「ちょっと待てよ。裏切り者の話はどうなったんだよ」
B 「もういいじゃないですかそれは」
T 「良かねーよ! L、あんたのその冷静さが鼻につくんだよ。なんだよ
『L』って。どっかの漫画みたいにカッコつけやがって」
N 「そうだ! 大体、てめぇのコードネームの『L』ってなんだよ!
おかしいじゃねーか!」
O 「あ、そっかぁ」
N 「気付くの遅ぇよ!」
B 「Lで始まる苗字なんてこの日本にはありません!!」
B、N、O、T・・・Lを不信な目で見る
K 「っぷ、あっははは!」
つられてAとS、Lも笑い出す
B 「え?」
L 「コードネームは本名の頭文字から付けないといけない、なんてルール
ありましたっけ?」
呆気にとられるBNOT
T 「A、あんた、『安達』とか『安藤』とか」
A 「さぁ」
T 「くっ・・・」
B 「そ、そんなぁ。私ら馬鹿みたいじゃないですか」
N 「一緒にすんじゃねーよ!」
O 「一緒です・・・」
T 「け、けどよぅ」
K 「まだなんか?」
T 「計画は完璧だったんだ。けど失敗した」
N 「そうだ。失敗したってことはなんか原因があんだよ!」
O 「そう言われましても」
A 「今ここでそれを議論するのはあまり意味がありません」
N 「(Bに)おいてめぇ! ちゃんと見張ってたのかよ!」
B 「や、やってましたよ!」
O 「私もきちんと防犯カメラにスプレーを」
L 「AとNが行員と客を銃で威嚇し、Tと私が金庫の金をバッグに詰め、
SとKの運転する車で分散して逃げる」
S 「運転手~!」
K 「俺ぁちゃんと自分の仕事したぜ」
A 「本来なら、ボスから指定されたこの部屋で、分け前を配ってさような
ら、のはずでした」
B 「あ、あのう、思ったんですが」
N 「んだよ」
B 「『ボス』って一体何者なんでしょう?」
しばし間
K 「『お金に困ってるあなた。3分で500万円以上稼いでみませんか?』
・・・『ボス』という管理人が運営する闇サイト」
O 「『準備や道具、経験も一切不要。あなたはこちらの指示通りに動くだけ』」
N 「集まったこの部屋には計画と指示が書かれた紙が一枚。車のキー。
そして」
T 「ピストルが8つ・・・」
B 「ま、まさか銀行強盗なんて」
L 「けれど同意し、実行した。(Bに)あなたも含め、私たち全員」
S 「しっぱい~ とんずら~」
B 「そうです! 失敗しちゃったんですよ! に、逃げましょうよ!」
O 「外は警官だらけですよ」
B 「けど、ここにいては『ボス』ってひとになにされるか」
K 「A、失敗したときの指示ってのは」
A 「・・・ありません」
N 「なんなんだよこれ! 一体どうなってやがんだよ!!」
また、間
と、L、携帯電話をいじっている
T 「(銃を向け)L! てめぇなにやってんだ!」
L 「情報を確認していただけです。今回の事件がどれだけマスコミに
流れてい・・・ はっ!!」
急に表情を変えるL
驚く一同
A 「どうしました?!」
L 「・・・やられた」
A 「え?」
L、黙って携帯をAに差し出す
A、それを受け取り、画面に目を走らす
Aに集まる一同
A 「『本日午後3時ごろ、コスモ銀行・やまと本店に8人組の強盗が押入っ
たものの、駆けつけた警官に』」
T 「俺たちのことだ!!」
L 「問題はその後です」
N 「(Aから携帯を奪い)『その数分後、今度はその斜め向かいのアポロ銀
行・やまと西支店にも強盗団が押入り、総額およそ3億円を奪って逃
走。現在も警察はその行方を・・・・』」
O 「偶然ですね~。でもこちらさんは上手く」
B 「ばか!」
S 「ばーかばーか」
K 「あーはっはっは! やられたな!」
O 「え?」
A 「私たちは・・・ ただの囮だったってことです」
N 「『ボス』って野郎、今頃3億円手にして俺たちのことどっかで笑って
やがんだ! くそ!!」
K 「もしかしてこの中に混じって笑ってやがるかもよ。あははは」
凍りつく一同
K 「な、なんだよ」
N 「ありえるな。そうか、てめーか」
K 「笑えねーな」
N 「そんな映画あったよな」
A 「やめなさい!」
T 「L! やっぱあんた怪しい! B、てめぇもそのビクビクした態度も
なんか演技くせぇんだよ!」
B 「そんな!」
O 「皆さん落ち着いて!!」
K 「そんなこと言うなら、Oだって怪しいぜ。あののんびりした態度。
余裕ってか」
N 「おいS! てめぇの馬鹿っぷり! それも演技か? ああ? てめぇ
がボスだろ? それともAか? リーダーだもんな、あんただろ、
ええ?!」
A 「いい加減に」
T 「とっとと吐けよ!!(銃を抜く)」
Tの動きに合わせて全員が銃を抜き、それぞれがそれぞれを狙う
緊迫の間
L 「・・・どうします? このままここで全員野たれ死にますか」
動けない一同
さらに、間
と、ドアを激しく叩く音
ビクッとする一同
N 「あのアマ!」
A 「(以下、ほぼ同時)待って!」
T 「動くな!」
K 「てめぇ!」
O 「ひぃ!!」
B 「わぁあー!!」
暗転
激しい銃声、数発
暗い中、女の声が聞こえる
金 「ちょっとあんたらねぇ! ・・・って、ま、いっか。やっと静かに
なったし」
了
改稿 2010/0608
このトリック、分かったひとは、気軽にご感想を^^
基本、キャストに男女の区分けは無いよう書いています。