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夜明けの街
限りなく黒に近い世界から紫へ色が変わると、空が出来始めた。
尾を惹く赤いランプの数は少しずつ増えはじめ、白いランプの数が少しずつ消えてゆく。
いくつもの灰色の建物が、茜に染まり始めると、闇から逃れていた人間達の息吹が聴こえ始める。
ホームに滑り込む列車は、大量にその息吹を喰らったかと思えば、またすぐに吐き出し、何度も何度も同じ動きを繰り返していた。
今日もこの街で、命が生まれ、そして、消えて行く。
万人が”受ける”平等ではない夜明け。
この朝日を喜ぶものにとっては大きく、悲しむものにとっては忌みするものだから。
だが、万人が”与えられた”夜明けは平等なのだ。
どんなに嬉しくても、どんなに悲しくても、同じものを同じだけ与えられるから。
夜明けも、生も死も、万人に”与えられる”
嬉しくても、辛くても、私たちは受け入れなければならない。
受け取らなければならない……
私は涙を流して、夜明けを受け入れた。