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エピローグ

 ベッドの上に横たわったまま、ニーナとアイラに出会った時のことを思い出していた。あれから驚くほど色々なことがあった。


 アイラが解読した太古の出来事と失われていた呪文は、俺達をとんでもない騒動に巻き込んだ。ずいぶん酷い目にもあったが、今となっては悪い思い出ではない。俺達はこの世界を、少なくとも俺達が大切に思う人達を救ったのだ。あの出来事が三人の心をさらに深く結びつけたのだと思う。


 去年俺は、自分の体が病んでいることに気付いた。三年前に死んだ母と同じ病だろう。残念ながらこの病の薬はまだ見つかっていない。末期になると患者は激しい苦痛を感じるようになる。確かにこの痛みに耐えられる者は少ないだろう。母は最期まで毅然とした態度だったが、その苦しむ姿を見るのは辛かった。


 だが俺には、子供の頃に苦痛に耐えた経験がある。この程度の苦痛なら表に出さないことができる。周りからは、ただ痩せていくようにしか見えないはずだ。おかげでみんなの悲しむ顔を見ないで済んでいる。あいつらだけは薄々気付いているかも知れないが、確信できないことは良い方に考えたくなるものだ。


 俺は自分の人生に満足している。生きた年数は他人より少し短かったが、他人の何倍も生きたという充実感がある。


 あいつらには失いたくないモノが沢山できた。俺が死んでも馬鹿な真似はしないだろう。あいつらがそれを手に入れる手伝いを出来たことが、俺の人生の最大の手柄だと思う。




 ああ。今、俺の中で何かが壊れた。


 あいつらはすぐ近くにいるはずだ。このまま死んだらあいつらには恨まれるかもしれないが、このまま最後まで二人の泣き顔は見たくない。心の中にみんなの笑顔を思い浮かべながら俺の人生を終えたい。俺の最後のわがままだ。



 もう目は見えない。


 遠くから聞こえるのは、子供達の笑い声だ。


 幸せそうな声だ……。




 俺は……


 幸せ……

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