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第七話 老婆の肖像その十三

「尚更面白いな」

「そうでしょ。許婚のいる相手をね」

「手篭めにするのも面白いな」

「古風な言葉ね」

「そうか。では雪子の世代ではどう言うのだ?」

「寝取るっていうのよ」

 それだというのだ。雪子はボトルを手に楽しげな笑みで述べた。

「それはね」

「寝取るか」

「そうよ。叔父様今までそうしたことはなかったわよね」

「初潮もきていない幼女を犯したことがあるがな」

 それでもだった。そうしたことはだ。

「これまでなかったな」

「多分彼氏持ちはこれまでにもいたと思うけれど」

「だがそれでもだ。許婚というのはだ」

「叔父様若い娘にしか興味がないからね」

「女は二十までだな」

 下卑た。原発事故を引き起こし怒鳴り散らしことしか取り柄のないかつての首相のそれを思わせる笑みでだ。男は雪子に対して答えた。

「それ以上はだ」

「興味がないのね」

「全くな。十歳は対象内だが」

 しかしそれでもだというのだ。

「二十になるとだ」

「興味ないのね」

「大人の女なぞ何の価値がある」

 実につまらないといった感じでだ。しかもだ。

 そこに下劣さと醜悪さを見せながらだ。男は雪子に話していく。

「だから御前ともだ」

「寝るというのね」

「近親相姦はいいものだ」

 それについてもだ。男は下卑た笑みを向ける。

「実にな」

「凄いわね。幼女だけでなく実の姪にも手を出すなんて」

「そういう御前も実の兄と寝ているな」

「悪い?私はね」

 ボトルを開けた。そしてだ。

 テーブルの上にあったもう一本のワインもだ。そのコルクを開けてだ。

 ラッパ飲みをはじめた。そしてだった。忌々しげな顔で言うのだった。

「お兄ちゃんとね」

「一緒になりたかったな」

「兄妹は結婚できないのよ」

 ラッパ飲みしながらだ。忌々しげに話していく。

「絶対にね」

「そうだ。何があってもだ」

「だからよ。幼馴染とかね」

 雪子のその白い顔にだ。ドス黒いものが宿った。

 そのドス黒い、仮面の裏側の如き顔でだ。雪子は叔父に対して言うのだった。

「そんな甘ったるいものはね」

「大嫌いだな」

「ぐちゃぐちゃにしてね。踏みつけてやるのよ」

「やれやれ。そんな絆はかい」

「幼馴染は一緒になれるじゃない」

「血縁関係じゃないからな」

「けれど兄妹はね」

 一緒になれない。だからこそだというのだ。

「そんな甘い世界に生きている奴等なんてどいつもこいつも踏み潰してやるわ」

「ははは。雪子は悪い女なのだな」

「そう言う叔父様は」

 ドス黒さをそのままにしてそこに邪悪な、悪鬼の如き笑みを浮かべてだ。

 雪子は叔父に顔を向けて。そして問うたのだった。

「どうなの?理事長でありながら」

「塾生でいい娘は片っ端から犯すことをか」

「ただ犯すだけじゃないじゃない」 

 雪子は理事長、清原由人に対して問う。

「薬漬けにもするし。拷問もするし」

「そしてだな」

「あの四人に下げ渡すこともしてるじゃない」

「彼等はいい人達だよ」

「それはどういう意味でかしら」

「私の助けをしてくれるという意味でね」

 そうした意味でだ。彼等はだというのだ。

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