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第七話 老婆の肖像その六

 十字は表情も口調も変えずだ。無機質にこう答えるだけだった。

「いえ。前からです」

「前からそうだってのかよ」

「まあ。確かにな、そんな喋り方だけれどな、前から」

「それでも何かいつも無機質な言葉で科学者みたいな口調だよな」

「そんな感じだよな」

「ですか」

 そう言われても口調は変わらない十字だった。そしてだ。

 やはり淡々としてだ。こう先輩達に言うのだった。

「これが僕の喋り方ですから」

「御前イタリアから来たよな」

「だったらイタリア語も喋れるよな」

「はい」

 その通りだと答える。

「むしろそちらの方がネイティブです」

「じゃあイタリア語もそんな感じか」

「そんな感じで喋ってるのかよ」

「そんな機械みたいな感じで」

「そうなっていると思います」

 琥珀の輝きの瞳もだ。動いてはいない。まるで宝石の様だがただ宝石になっているだけだ。

「自覚はないですが」

「そうか。まあいいけれどな」

「御前とりあえず悪い奴じゃないからな」

「むしろ礼儀正しいしいい奴だからな」

「だからいいけれどな」

 先輩達は十字のそうした個性は認めた。そうしてだ。

 彼にあらためてだ。こう言ったのだった。

「で、また聞きたいことあるか?」

「あの先生のことの他にな」

「まだあるか?」

「いえ、ありません」

 ないと答える十字だった。

「今は特に」

「そうか。じゃあいいな」

「他に話したいことあったら何でも聞くぜ」

「そして情報なら知ってる限りは教えるからな」

「そうするからな」

「有り難うございます。ではまた」

 こう述べてだ。そうしてだった。十字は今は先輩達と別れた。そうしてだ。

 料理部の部室に向かいそこに隠しカメラや盗聴器を置いた。ここで鍵を開けてそのうえで入って置いてそれからだ。部屋の鍵をかけて去ったのである。

 それからだ。その放課後だ。部活から帰り教会に戻ってからだ。十字は神父に言った。

「仕掛けたよ」

「悪に対する目と耳をですね」

「うん。置いておいたよ」

「では今から」

「見て聞こうか」

「はい、それでは」

 神父は十字のその言葉に静かに頷いた。そうしてだ。

 教会の奥の一室、モニターと聴覚施設がある機械仕掛けの、教会にあるとは思えない趣きの部屋に入ってだ。そしてそのうえで目と耳を利かせたのだった。

 その結果だ。神父は苦々しい声で十字に言うことになった。

「予想はされていましたね」

「うん、既にね」

「そして、ですね」

「予想通りだったよ」

 モニターとステレオから見えて聴こえる姿と声を聴きながらだ。十字は震央に述べる。

「何もかもね」

「そしてその予想はですね」

「醜い予想だったよ」

 まさにそうだと言う十字だった。

「それが当たってもね」

「嬉しくはないですね」

「嬉しい筈がないよ」

 十字はモニターの前に座っている。神父はその左斜め後ろに立っている。そのうえでモニターを見据えながらだ。神父に対して言ったのである。

「こんなものを見てもね」

「そうですね。それは私もです」

「この娘は苦しんでいるよ」

 十字は映像の中の彼女を見て言う。

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