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第七話 老婆の肖像その五

 雪子は遠くから含み笑いで見ていた。その口元と目の光には明らかに邪悪があった。だがこのことには誰も気付かなかった。たった一人を除いて。

 十字はその雪子を廊下から見てからその場を去り屋上に向かった。そしてそこでだ。

 あの四人の先輩達、いつもこの屋上でたべっている彼等にだ。春香のいる料理部のことを尋ねたのだった。

「ああ、料理部なあ」

「あそこか」

「あの部活について御存知でしょうか」

「少しはな」

 そうだとだ。先輩の一人が答えてきた。先輩達は屋上のベンチのところにそれぞれ座ったりフェンスにもたれたりしてパックの牛乳やジュースをストローで飲んでいる。十字もその中に入ってだ。そのうえで先輩達に尋ねてきていた。

「清原先生が顧問でな」

「で、妹さんもいて」

「その部活だろ?」

「俺達もある程度は聞いてるぜ」

「それでなのですが」

 十字はここで彼女のことをだ。先輩達に尋ねた。

「前にも御聞きした気がするのですが」

「んっ、そうだったか?」

「はい。本木春香さんのことですが」

 春香のフルネームを出したうえで先輩達に尋ねる。

「あの人は」

「料理部のエースかよ」

「あの娘がどうしたんだよ」

「はい。その顧問の清原先生に注目されているのでしょうか」

「何しろ料理部のエースだからな」

「そうみたいだぜ」

 先輩達はストローでジュースを飲みながら十字に話していく。

「それで結構マンツーマンで指導も受けてるってな」

「確かに前話した気がするな」

 先輩達もここでこう思ったのだった。

「まあそれでよく一緒にいるみたいだな」

「指導の関係でな」

「清原先生っていい先生だしな」

 こんな言葉も出て来た。

「女子に大人気でもそれを鼻にかけなくてな」

「誰にでも穏やかで公平でな。色々教えてくれてな」

「そうそう、俺一年の時にあの先生の世話になったんだよ」

 先輩の一人がこんなことを言う。

「赤点取りそうな時に教えてもらって助かったんだよ」

「だよな。誰にでも優しいしな」

「あんないい先生いないよ」

「評判はいいのですね」

 十字はそんな先輩達の言葉を聞いてこう述べた。

「そうなのですね」

「悪く言う人はいないよな」

「だよな。この学校にはな」

「一人もな」

「特に女子からは凄い人気だぜ」

「ですか。わかりました」

 一郎の表の評判を聞いて静かに頷く十字だった。

 そしてそのうえでだ。先輩達にこのことも尋ねたのだった。

「あの先生は清原塾では」

「ああ、あの塾の講師もやってるぜ」

「うち私立だから塾の先生との掛け持ちもしていいからな」

「それでそっちでも評判いいみたいだぜ」

「いい講師だってな」

「確かあの塾の理事長さんの親戚だとか」

 十字がこのことを話に出すとだ。すぐにだった。先輩達はこう言ってきたのだった。

「よく知ってるな。そうだよ」

「その通りだよ、あの塾の経営者の一族なんだよ」

「理事長さんの甥御さんなんだよ」

「そうなんだよ」

「ですね。あの方は」

 そうだとわかる十字だった。そのうえでだ。

 静かにだ。先輩達に述べたのだった。

「この学園と塾の双方に関わりのある方ですね」

「そうだけれど何かな」

「おい佐藤、今の御前の喋り方なにかおかしいぞ」

「推理小説の探偵か刑事みたいなこと言うな」

「そんな喋り方になってないか?」

 先輩達は十字の今の言葉に眉を曇らせて問い返した。先輩達のそうした言葉にだ。

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