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第六話 エトワール、または舞台の踊り子その九

「何をするにもね」

「そうですね。では」

「塾の裏手に入って」

 そしてだというのだ。

「そこからね」

「その十階まで」

「行くよ」

 そうするとだ。十字は言ってみせた。

「今からね」

「御気をつけて」

「マフィアとどちらが危険かな。そのアジトの中に入ることよりも」

「やはりそれはです」

「マフィアの方が危険がな」

「そう思います」

 神父もだ。十字にこう答える。携帯の向こうから」

「それを考えるとまだ楽でしょうか」

「そうかな。それじゃあね」

「はい。それでは」

 一旦携帯を切ってだ。そのうえでだ。

 十字は清原塾の裏手に回った。そこの扉をだ。

 針金を出してそれを使ってだ。何なく開けた。見ればその手には白手袋で覆われている。

 そのうえで扉の向こうに入った。それからだ。

 扉を閉めて鍵を閉める。そのうえで前に顔を向けた。そこにはもうエレベーターがあった。

 エレベーターは一気にだ。十階まで行くものだった。そのエレベーターを使ってだ。

 十字はすぐに十階まで行った。その十階までだ。そしてエレベーターを出ると。

 廊下、赤絨毯に覆われたそれがあった。それを見てだ。

 十字はだ。携帯でだ。神父にこう言ったのだった。

「今画像を送るけれど」

「どの様な感じでしょうか、そちらは」

「塾じゃないみたいだね」

「塾ではですか」

「うん、違うよ」

 こう言うのだった。

「何かね」

「どういった感じでしょうか」

「お屋敷?絨毯があるね」

「はい、床は全てそうですね」

「こんなのはないよ」

 神父に画像を送ってからまた言うのだった。

「塾には思えないね」

「そうですね。こんな感じになっているとは」

「司教も思わなかったかな」

「はい、とても」

 思えなかったと答える神父だった。電話の向こうから。

 そのうえでだ。神父はこう十字に述べた。

「この階だけでこれは」

「そう、理事長の専用の階で」

「それはないですね」

 神父は日本人の視点や考え方から述べていく。

「個人のみの贅沢かと」

「個人だけがこうして贅沢をしてしかも秘密にしている」

「そうしたことをする人物はやはり」

「腐敗しているね」

「そうですね。間違いなく」

 他人の場所やものは質素にして己のそうしたところは贅沢にする、しかもそれを誰にも見せない様にする。そうした輩が陥る世界はどういった世界か、十字も神父もよく知っていた。

 それでだ。神父は十字に言うのだった。

「この学園の理事長は」

「絨毯だけじゃないよ」

 今度はだ。十字は天井を写してまた神父に送った。今度は。

「シャングリラですね」

「いいガラスだね」

「はい、金色に輝く」

「このガラスは日本のものではないね」

「チェコのものですね」

 画像にあるものを見てだ。そして言う神父だった。

「ボヘミアングラスですか」

「それをシャングリラにした」

「それですね」

「うん。これはかなり高いよ」

「先程の絨毯も。それにその天井にしても」

「かなりいいよ」

 少なくとも九階までの天井とは違っていた。何もかもがだ。それは壁もだった。

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