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第六話 エトワール、または舞台の踊り子その八

 妹はだ。こうも言ったのだった。

「御互いの身体もね」

「よく知っているんだね」

「兄妹でも」

 それでもだとだ。その禁じられた関係についての言葉は。

「しちゃいけないとか。そんなタブーはね」

「僕達には関係がない」

「ばれる筈もないから」

 その可能性もないと。完全に周囲をなめてかかっていた。

「楽しむだけよ」

「ばれなければいい」

「そう。何でもね」

「それでこそ僕の妹だよ。それじゃあ」

「ええ。それじゃあね」

「僕も飲もうかな」

 雪子が持っていて今は横に置いたそのグラスを見てだ。一郎は述べた。

「そのブランデーを」

「美味しくないわよ。いいの?」

「雪子の口には合わなくても僕は合うかも知れないじゃない」

「だからなのね」

「ええ。貰おうかな」

「じゃあ。どうぞ」

 兄に応えてだ。そのうえでだ。雪子はグラスとその横にあるブランデーのボトル、ダークグリーンのその色の丸いものを手渡した。それを受けてだ。

 一郎は自分で入れてそのうえで飲んだ。それから言った。

「美味しいじゃないか」

「そう?私の口にはちょっと」

「合わなかったんだね」

「刺激が足りないのよ」

 それでだとだ。雪子は面白くなさそうに言った。

「どうもね」

「刺激が足りない」

「そうよ。足りないのよ」

 こう言うのだった。

「どうもね」

「成程ね。刺激ね」

「だから。今は」

「やっぱりモルヒネをするのかな」

「そうするわ。モルヒネを味わった後でね」

 そのうえでだと。酒を飲み兄の横顔を見てだ。

 そうしてだ。こう言うのだった。

「またしましょう」

「やれやれ。好きだね」

「好きよ。お薬を打った後であれをするのって」

 どうかとだ。邪な宴を楽しむ顔でだ。雪子は言っていく。

「最高だから」

「乱れて。そうして」

「貪る感じでいいから。それじゃあお薬打ってくるから」

「うん。それからまたね」

「楽しもう。二人で」

 快楽を貪る顔でだ。雪子は言っていた。二人は夜の中でだ。禁じられた宴を楽しんでいた。そしてそれはだった。実際に誰も知らないものだった。

 十字は日曜にだ。いつもの白い詰襟を着て一人でだった。

 朝早くに家を出てそのうえでだ。町を歩きながら携帯に連絡を入れた。そのうえでだ。

 携帯に出て来た神父にだ。こう告げたのだった。

「今からね」

「塾に入られますか」

「日曜。それに朝早くだとね」

「日本の塾は誰もいません」

「そうらしいね」

「日本の塾は日曜は精々テストがある程で」

「テストがあるのなら」

 それならば余計に。そうした口調だった。

「皆そちらに関心がいって」

「はい、枢機卿には誰も気付かれません」

「日曜は神が定められた安息の日」

 ここでもキリスト教の教えを言う十字だった。

「そのお蔭で人も少ないよ」

「街のですね」

「だから余計に動きやすいよ」

 淡々とだ。十字は話していく。

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