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第六話 エトワール、または舞台の踊り子その七

「それをあの四人にも教えてやるわ」

「やれやれ。じゃあ僕は」

「春香をこれまで通りね」

「うん、楽しませてもらうよ」

 一郎の目の奥の淫猥なものに加えてだ。

 雪子と同じく邪悪なものを帯びさせてだ。そして言うのだった。

「これからもね」

「今度その趣向するから」

「うん。それで今度は」

「あの空手部のよ」

 こうだ。ブランデーをまずそうに飲み干してからだ。雪子は言った。

「あの二人どうしてやろうかしら」

「叔父様とお話をして決めようか」

「ええ、塾のこれといった娘は全てね」

「叔父様が手をつけられると決まってるからね」

「それにしても叔父様もお盛んね」

 これまでと変わってだ。醜い、まさに悪鬼の笑みを浮かべてだ。雪子は言った。

「小学生から予備校生までね」

「何人も。いや一ダースはいるかな」

「常にそれだけ手をつけられているわね」

「それも十階でね」

「誰もあの階にあんなものがあるとは思いも寄らないでしょうね」

「そうだね。副理事長の真澄叔父さんですら入られないから」

「入られるのはね」

 十階に入られる、その人間は。

「叔父様の他に私達に」

「彼等だね」

「いい下っ端よ」

 ある者達についてだ。雪子は侮蔑と愚弄を込めて言った。

「お金と女の子さえあげていれば動いてくれるからね」

「そうだね。彼等はね」

「あの四人はあれでもね。上手だし」

「ああ、また寝たんだね」

「寝てあげたのよ」

 また侮蔑を込めて言う雪子だった。

「暇だったから」

「彼等喜んでたかな」

「ええ。ついでにお薬まであげたから」

「おやおや。サービスしたね」

「叔父様が持っておられたのよ」

 薬、それをだというのだ。

「それをあげたのよ」

「何の薬かな、それで」

「覚せい剤よ」

 具体的にはだ。この薬だった。

「それをあげたわ」

「いいね。あれはね」

「大麻とかコカインもいいけれどね」

「そう。あれを使って遊ぶとね」

「普通にやるのよりずっといいのよ」

 今度はだ。背徳の遊戯を思い出しだ。それに浸りながらの言葉だった。

「今もする?確かモルヒネがあったわね」

「いや、僕はいいよ」

 その薬についてだ。一郎はやんわりと断った。

「気分じゃないからね」

「そうなの」

「けれど雪子が楽しみたいのならね」

「そうね。後で気が向いたらね」

 そのモルヒネをだ。楽しむというのだ。

「そうするわ」

「じゃあね。それにしてもね」

「それにしても?」

「学校じゃ明るい人気者なのに」

 こうだ。一郎はややシニカルな笑みで妹に言ったのだった。

「その実際は、だね」

「それはお互い様じゃない」

 雪子は兄のその言葉にだ。彼女もシニカルな笑みになって返した。

「お兄ちゃんだって学校じゃ優しくて気品のある先生じゃない」

「そうだったかな」

「そうよ。それじゃあ同じじゃない」

 こう言うのだった。その笑みで。

「私とね」

「ふふふ。兄妹で同じなのかな」

「そうよ。兄妹だから」

 それでだとだ。その兄を見ながらだ。

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