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第六話 エトワール、または舞台の踊り子その一

               第六話  エトワール、または舞台の踊り子

 春香は望にだ。クラスでこう言っていた。

「じゃあ今日ね」

「ああ、料理部のパーティーな」

「来てくれるわよね」

 また向かい合って弁当を食べながらだ。春香は望に言うのだった。

「それにね」

「ああ、けれどな」

「けれど。何よ」

「御前本当に料理部のパーティーには絶対に呼んでくれるよな」

 それがどうしてかわからない口調でだ。望は春香に尋ねる。

「それ何でなんだよ」

「当たり前じゃない。人が揃わないとね」

「パーティーが成り立たないからよ」

「それでか?けれど料理部のパーティーってな」

「何よ。うちのパーティーがどうしたのよ」

「いつも結構来てないか?」

 春香に常に呼ばれているパーティーのその状況を思い出しながらだ。春香に言うのだった。

「生徒も先生もな」

「そうかしら」

「いや、そうかしらじゃなくて実際に多いだろ」

 少し抗議めいた口調になってだ。望は春香に言い返す。

「別に人が足りないわけでもないだろ」

「まあそれはね」

「それで何でだよ」

 口を尖らせてだ。望は春香に問うた。

「いつも俺呼ぶんだよ。それにな」

「それに?」

「春香の作ったものはいつも俺にくれるよな」

「それがどうかしたの?」

「それも何でだよ」

 眉を顰めさせてだ。望は春香に問うのだった。

「それがわからないんだけれどな」

「そ、それはね」

 望の今の問いにだ。春香は困った、そしてよく見れば何かを隠している顔になってだ。

 そのうえでだ。春香に言うのだった。

「おば様に言われたのよ」

「うちのお袋にかよ」

「あんたを宜しくって。だからよ」

 こうだ。何かを隠している、だが望が気付かないことにほっとしながら言うのだった。

「それでなのよ」

「それでなのかよ」

「そうよ。だからよ」

「それって幼稚園の頃に言われたことじゃないのか?」

 望は春香にさらに突っ込みを入れた。

「それか小学生の低学年の頃だろ」

「そ、そうだったかしら」

「何でそんな大昔に言われたこと覚えてるんだよ」

「だって。言われたから」

 かなりバツの悪い顔になって返す春香だった。

「それでよ」

「御前そんな律儀な奴だったんだな」

「そうよ。悪い?」

「いや、律儀は悪くないからな」

「そうでしょ。それにね」

「それに。今度は何だよ」

「私の作った料理美味しい?」

 このことはかなり切実な顔でだ。春香は望に問うた。今度は春香が問うたのである。

「今のお弁当も」

「トマト入ってるよな」

 彼の嫌いなだ。それがだというのだ。見れば今の弁当にもそれは入っている。しかしそのトマトはだ。望は全く箸をつけずにだ。そのうえで他のものを食べている。

 そうしながらだ。彼は言うのだった。

「料理部で作る料理も」

「悪い?」

「俺トマト嫌いなの知ってるだろ」

「トマトは身体にいいの」

 春香はこのことは厳しい声で指摘した。

「だからよ。それでなのよ」

「いつも入れるのかよ」

「入れないお料理だって作ってるじゃない」

「けれど弁当には殆ど入れてるよな」

「身体にいいからよ」

 まるで姉が弟に、姉さん女房が夫に言う様にだ。望に言う春香だった。

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